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世界1位を経験してもピリピリ感ゼロでゆるキャラみたい バドミントン山口茜の真骨頂とは?
text by
石井宏美Hiromi Ishii
photograph byItaru Chiba
posted2020/09/28 18:00
9月上旬、日本代表の合宿に参加した山口。東京五輪へ向けた抱負を語ってくれた
怪我に苦しんだ2019年
そんな彼女が五輪に向け戦った2019年は、浮き沈みの激しい1年となった。
たとえば、昨年7月のインドネシアオープンとジャパンオープンでは、格付けの高い大会で2週連続優勝。スピードの変化や駆け引き、フットワークなどで相手を上回るようなイメージ通りのプレーには自身も大きな手応えも掴んでいた。
しかし、その後は腰痛や右ふくらはぎ痛の怪我に苦しんだ。満足な練習ができず、調子が上がらない時期を経験した。
「体の調子が良すぎて怪我につながったのか、疲労が蓄積したのか、それとも突発的なものだったのか、怪我の原因がよくわからなかったんですが、(インドネシアOPとジャパンOPの)2大会ですごく調子が良かった分、感覚的なものやコンディションをキープできなかったことがとても残念で。2週連続で良いプレーが出来たことは自分の中でも成長の1つだと捉えていたので、怪我をしてしまい少しもったいないことをしてしまったなと」
その後、世界選手権・中国オープンではプレーの精彩を欠き、まさかの初戦敗退を喫した。
「いいイメージが残っていたので、“もっと速く動けるんじゃないか”と、気持ち的に空回りして突っ込みすぎてしまうところがありました。実際、体の状態やフットワークのスピードはそんなに悪くはなかったと思うのですが、“もっとできる”という気持ちが強すぎてしまい、結果的にあまりいいプレーにはつながっていなかったと思います」
東京五輪の出場権はほぼ手中にある
しかし、調子が上がらないなかでも10月にはフランスオープンでベスト4入りし、「こんな状態でもある程度の結果を残せるんだ」と自信になった。プレー中は「もっとできるはずだ」「ミスが多いな」と悪いところばかりが目についたが、試合映像を見て客観的に振り返ると、「そんなに悪くないな」と、自分がやるべきことにフォーカスできたという。年明けのタイ・マスターズでは半年ぶりにワールドツアーを制覇し、復調の兆しを見せた。
今年3月の全英オープン後、ワールドツアーは中断しているが、それにより東京オリンピックの出場権の決定方法が見直され、12月までに行われるはずだったツアーは、オリンピック出場権レースの対象外となった。世界バドミントン連盟からは、中止や延期となったオリンピック出場権の対象大会を2021年の同時期に行い、レースの対象とする方針が示されている。
つまり、出場権レースは約1年間の中断を経て再開する形となり、獲得済みのポイントも有効となる。山口はすでに多くのポイントを獲得しており、世界16位以内と日本人2位以内、東京オリンピックの出場が確定的な状況だ。