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規則違反などで協会や選手と“バトル”の過去も…全米オープン初優勝デシャンボーの努力と願い
text by
舩越園子Sonoko Funakoshi
photograph byAP/AFLO
posted2020/09/21 18:00
4日間アンダーパーで回ったのはデシャンボーのみ。混戦が予想された全米オープンでその“努力”を証明してみせた
何度も「バトル」を繰り返してきた
新ルールが施行された2019年の春。従来通りにピンフラッグを抜いてパットするか、それとも抜かずにパットするかがプロゴルフ界で取り沙汰され始めたとき、一番最初に独自の意見をきっちり口にしたのはデシャンボーだった。ピンフラッグは「可能な限り、差したまま。でも、竿の素材とその反発性次第で、抜くかどうかを臨機応変に対処する」と言い切り、人々を驚かせた。
スロープレーに関する「バトル」はその後も続き、とりわけブルックス・ケプカとは何度か激しい言い合いになった。そのケプカが今大会を欠場していたことは、運命の皮肉と言うべきか、それともラッキーと言うべきか。
ともあれ、ことあるごとにデシャンボーは米ツアーやUSGA、選手やメディアとバトルを繰り返し、そのたびに彼は実は深く傷つき、打開策を探ろうと思案に暮れていた。
肉体改造に着手、飛距離は370ヤードに
これまではバトルになるたびに、デシャンボーが仕方なく折れてきた。しかし、彼は「なぜ、みんなに合わせなければいけないのか? なぜ、僕なりのゴルフではダメなのか?」という疑問を捨て去ることができずにいた。
自分が正しいと思うことをやりたい。自分なりのゴルフで戦いたい。
「いろんなゴルフがあることを、みんなに伝えよう」
そんな強い意志を抱いたのは、コロナ禍で米ツアーが休止されていたときのこと。肉体を増強して、プロゴルファーらしからぬ肉体を作り上げ、誰よりもパワフルなゴルフでコースも他選手も圧倒するゴルフを目指そうと決意したデシャンボーは、その通り、体重を20ポンド(約9キロ)以上も増やし、370ヤードをかっ飛ばす別人になって、再開されたツアー会場に登場。ロケット・モルゲージ・クラシックを制し、通算6勝目を挙げたことは記憶に新しい。