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羽生善治九段、タイトル100期に向け大一番に挑む「不安や恐怖や追い詰められた気持ちを楽しむ」
text by
NumberWeb編集部Sports Graphic Number Web
photograph byKeiji Ishikawa
posted2020/09/19 15:20
羽生善治九段(撮影別日)
やつれた表情で、宙の一点を見つめる羽生
当時の名人戦の取材に行った高川氏は、対局中にトイレに行く羽生名人(当時)と会場の通路ですれ違ったという。同記事にはそのときの様子が描写されている。
<時刻は夜8時半を回り、対局開始から12時間が過ぎようとしている。
やつれた表情で、宙の一点を見つめる羽生の視界に、私は全く入っていなかった。無言のまま狭い通路をすれ違う。そのわずかな瞬間、聞こえてきたのだ。彼の半開きの口から漏れる、激しい息遣いが……。
「はあ、はあ……」
ラストスパートをかけたマラソンランナーが最後まで全力疾走をやめない、そんな狂おしいほどの響きがあった。羽生は最後の最後まで、文字通り、一生懸命だった>
この記事から9年が経ち、今月中には50歳になる羽生九段。おそらく気力、体力とも使い果たすであろう、同世代の丸山九段との死闘は、今夜佳境を迎える。