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オリンピック出場3回の荒木絵里香がバレーボール人生最後の1年に賭ける思い 

text by

林田順子

林田順子Junko Hayashida

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photograph byKiichi Matsumoto

posted2020/09/16 11:00

オリンピック出場3回の荒木絵里香がバレーボール人生最後の1年に賭ける思い<Number Web> photograph by Kiichi Matsumoto

忘れられないロンドン五輪

 オリンピックでは初めてキャプテンを務めたロンドン大会は、私の競技人生の中で最も忘れられない大会です。20歳くらいの後輩から、自分と歳の近い仲間、35歳くらいの先輩まで幅広い選手がいて、キャリアも性格も、これまで歩んだ過程もバラバラ。それぞれ個性もすごい豊かでしたね。

 だけど、全員が何をしなきゃいけないか、何を求められているかというのを理解していて、違う個性を生かし合いながら、目標に向かって進むことができた。

 これって言葉にするのは簡単ですけど、とても難しいことです。今回は経験も年齢も自分がダントツなので、同じキャプテンでもロンドンの時とは立ち位置が違うと思っています。口で言うことも大事だけれど、行動も伴わないといけない。責任の大きさを実感しているところです。

 ただ、こんなこと言うとまた年取ってるって思われちゃうんですけど(笑)、今どきの若い子ってすごいですよね。私が彼女たちの年齢の頃は、自分に求められていることだってよく分からなかったのに、今の子はすごく落ち着いていて、堂々としているし、自分の役割や課題をちゃんと理解して、取り組めている感じがして。心からすごいなって思っています。

女性アスリートの選択肢のひとつに

 結婚や出産をしても競技を続ける女性アスリートって日本ではまだ少ないと思うんです。ママさんアスリートっておすすめだよ、というつもりはないんです。ただ、自分自身、いろいろな分野で結婚・出産をして働いている方を見て、すごく励まされているので、自分も誰かにエネルギーを受け取ってもらえる存在になれればいいですし、女性アスリートの選択肢のひとつになればいいなと思っています。

 夫はもうやれるところまで頑張れ、常に行け行けと私のことをプッシュしてくれているし、いろいろサポートもしてくれて、本当にありがたいですね。母や娘にも大変な思いをさせているなと思っています。

 だからこそオリンピックまでの1年、頑張って、最後はメダルを取って、チームメイトとみんなで泣いて笑って終わりたい。そう思っています。

荒木絵里香

荒木 絵里香Erika Araki

1984年8月3日、岡山県生まれ。小学5年生の時にバレーボールを始め、成徳学園(現・下北沢成徳)高校では大山加奈らと共に、春高バレー・インターハイ・国体の高校3冠を制覇。2003年、東レアローズに入団。1年目からVリーグアタック決定率2位に入りベスト6を受賞。同年、全日本に初選出。オリンピックには2008年北京から3大会連続出場。2012年ロンドン大会では日本女子28年ぶりとなる銅メダル獲得に貢献。2013年に結婚し、翌年に出産。現在は育児と競技生活を両立している。トヨタ車体クインシーズ所属。

ナビゲーターの俳優・田辺誠一さんがアスリートの「美学」を10の質問で紐解き、そこから浮かび上がる“人生のヒント”と皆さんの「あした」をつなぎます。スポーツ総合誌「Number」も企画協力。

第125回
荒木絵里香(バレーボール)

9月18日(金) 22:00~22:24

バレーボール日本代表・荒木絵里香選手は2008年の北京から3大会連続でオリンピックに出場。2012年のロンドン大会では、日本女子28年ぶりとなるメダル獲得に大きく貢献しました。プライベートでは2013年に結婚し、翌年に出産。練習や試合に加え、育児もこなす忙しい毎日が続きます。本当はこの夏を最後に引退することを決めていました。そんな中で決まった東京オリンピックの延期。とても前向きに捉えることはできなかったとリアルな胸中を明かします。葛藤の日々の中、全てを受け入れて前に進み続ける彼女の美学を紐解きます。

第126回
マンスリースペシャル

9月25日(金) 22:00~22:24

第123回から第125回までに登場した元バスケットボール女子日本代表・中川聴乃さん、Bリーグ・千葉ジェッツに所属するバスケットボール日本代表・富樫勇樹選手、バレーボール女子日本代表としてオリンピックに3度出場した荒木絵里香選手。第126回は未公開シーンを含む3人の総集編をお届けします。

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