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J一番の注目クラブは本当に攻撃的?
ギラヴァンツ北九州、快進撃の秘密。
text by
吉崎エイジーニョ“Eijinho”Yoshizaki
photograph byFAR EAST PRESS/AFLO
posted2020/08/31 20:00
小林伸二監督はスポーツダイレクターも兼任する総責任者として、クラブをJ3最下位より浮上させ、J2での躍進にまで導いた。
戦術の継続で昇格後もしばらくは戦える。
今季は降格がないものの、「生き残り」という観点で見ると、意外にも昇格後、すぐにその年で降格を喫したのは2019年の鹿児島ユナイテッドのみだ。
残りの6チームのうち、じつに4チームは「開幕ダッシュの貯金により、最終的に中位から下位に生き残る」というパターンだ。
■2015年昇格のツエーゲン金沢(序盤に6連勝)…最終順位12位
■2016年昇格のレノファ山口(13節に3位)…12位、町田ゼルビア(9節に首位)…7位
■2019年のFC琉球(開幕4連勝)…14位
4事例のうち、3つが前年度からの監督が継続的に指揮を執った。つまり、1つ下のカテゴリーであっても「戦術の継続」はある程度の効果があるということ。今季のギラヴァンツ北九州もシーズン3分の1あたりの現時点まではこの流れにある。
挑戦を恐れない監督達が躍進する!
また2019年のFC琉球は樋口靖洋監督が新たに就任しての快進撃だったが、じつは現在の小林監督との共通点がある。「基本的な戦術を整理し直せるタイプの監督」。樋口監督はその2年前の2017年、アマチュア選手も多く、それまでJ3で3年連続最下位だったY.S.C.C.横浜を14位に上げた。この年のチームを直接目にしたことがある。シーズン後半にクラブ初の7戦負けなしを記録した頃、筆者が取材する北九州とも対戦したが、じつに戦術的に整理され、自信をもって戦うチームだった。
小林監督もそうだ。2019年、前年に最下位だった北九州に就任した当初は「パスを受ける時、ちょっと角度を変えればまったく視野が変わるもの」と口にしていた。そこから教え直すのか、と思ったものだ。
個人能力の評価ではJ1からJ2のトップに至らない選手の集団も、チーム戦術、個人戦術に目覚めさせることで結果に繋げられる。Jリーグ27年の歴史のなかで、J3からJ2に至る場所に、そういったタイプの監督の新たな活躍の場が生まれているのだ。昨季から藤枝MYFCを大躍進させる石崎信弘監督もまた然り。