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大迫傑が『Sugar Elite』で狙うこと。
「とにかく背中を見せていきたい」
text by
林田順子Junko Hayashida
photograph bySports Graphic Number
posted2020/07/21 19:00
日本記録を更新した3月1日の東京マラソン終了後、アメリカ・ポートランドに戻って練習をしてきた大迫。
大迫もトップランナーを見て衝撃を受けた。
大迫自身、早稲田大学の3年時にナイキ・オレゴン・プロジェクトに参加し、日本に戻った時にはアメリカで学んだことを練習に組み込み、それを見た他の選手たちも参考にしていたという。以前、大迫にその時のことを聞くと、こう語っていた。
「大学3年でナイキ・オレゴン・プロジェクトに参加するまでは、僕もいろいろなことが見えていませんでした。でも1歩あそこに足を踏み入れたら、いやでも自分の立ち位置を自覚をせざるを得ない状況になる。モハメド・ファラーやゲーレン・ラップたちが、質が高くて、ものすごいボリュームのトレーニングをしているんです。
世界のトップ選手ですら、ここまでやらなきゃいけないんだと腹を括らざるを得ない。(トップとの差があるという現実に)向き合うことの怖さはあるけれど、強くなるためには目を背けるべきではない」
世界との差を間近で見てきたからこそ伝えられるものがあるはず。そう大迫は考えているのだ。
「アメリカに来て、単純に僕の力だけじゃ、世界と戦うというのはやはり限界があるというのを痛感して。大学や実業団など、うまく機能しているチームと一緒に協力しあって、日本を強くしていこうよという思いですね」
Sugerには2つの意味がある。
ちなみにチーム名のシュガーエリートは、大迫のニックネームに由来している。Suguruと呼びづらいため、チームではSugarと呼ばれているという。
「もうひとつ別の意味もあって。悔しいときに英語圏では“Shit(クソ!)”とか言われるじゃないですか。調べたらSugarってShitの綺麗な言葉として使われることがわかって。アメリカに来て、悔しい思いや、うまくいかないことを経験してきた自分の競技生活にぴったりだなと思ったんです。
だけど、そういう思いがあったからこそ、今の自分がある。若い選手たちにも、強さに対してのフラストレーションが溜まっていたり、常に飢えたり、悔しい思いをしている、そのエネルギーを強さに変えて、世界で戦っていこうという思いで名付けました」