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“決められる人”は何が違うのか?
金丸晃輔のフリースローに哲学を見る。
posted2020/07/18 08:30
text by
青木美帆Miho Awokie
photograph by
SeaHorses MIKAWA
「65」……昨シーズン開幕戦からの連続成功回数
シーホース三河の金丸晃輔は、Bリーグ不動のフリースロー王だ。昨季は97.4%(78本中76本成功)の驚異の成功率をマーク。さらに自身が作った54本の連続成功記録を65本に更新した。これはNBAの歴代記録と照らし合わせても20傑に相当する記録である。
どんな難しいシュートも表情を変えることなく、淡々と沈める姿からついた異名は“精密機械”。フリースローの位置づけは「もらった瞬間に点が入るもの。得点を取りたい僕からすればラッキー」だと説明する。外れることなど端から考えていないのだ。
しかし、そんな金丸にもフリースローを落とす日が訪れた。2月9日のレバンガ北海道戦。ベンチスタート、相手チームのテクニカルファールという普段と異なる状況の中で得たシュートを落とし、天を仰いだ。
「直前までボールを触っていなかったし『まずいな』と思ったら、案の定外してしまいました。60本を超えたあたりから周りが騒ぎ出して『そっとしておいてくれ』って感じだったので、外したときは悔しさもありつつ安堵も大きかったですね」
“精密機械”は、実に人間くさい当時の感情を明かして笑った。
金丸がフリースローにフォーカスしだしたのは、大学卒業後にパナソニックトライアンズに入団してから。大学にはなかったフリースローのタイトルを獲得したいという単純な動機だったが、入団2年目にそれを早々に実現させると、翌年には追われる立場に苦しんだ。