フィギュアスケート、氷上の華BACK NUMBER
羽生結弦の実績、貢献は別格。
必然のISUアワード初代最優秀選手賞。
text by
田村明子Akiko Tamura
photograph byGetty Images
posted2020/07/15 11:50
怪我のため出場も危ぶまれた平昌五輪でも見事な演技を見せ優勝。五輪2大会連続金メダルという快挙を成し遂げた。
羽生を輪の中心として、人々が大移動をする。
今では羽生を輪の中心として、人々が大移動をする。
彼の出場する大会が発表された直後、開催地のホテルは売り切れになる。海外の大会でも、羽生が出場する会場の6割以上が、リンクに投げるくまのプーさんと日の丸を抱えてはるばる応援に来た日本のファンで埋め尽くされるのだ。
リンクに貼られる広告のバナーも8割方が日本の企業だ。プレスルームも半分以上が日本の記者で、ミックスゾーンでは羽生本人の姿が見えなくなるほど、我々記者がびっしりと周りを取り囲む。
関係者が面白そうに携帯で我々の姿を撮っていく。
この光景は、傍から見たらさぞや異常に見えるであろうなと自覚はあっても、現場まできて羽生の言葉を一言でも聞き逃すわけにはいかないので、こちらも真剣勝負。他の国のコーチなどの関係者が通りかかると、面白そうに携帯で我々の姿を撮っていく。
とほほ、と思うことはあれど油断すれば選手の声が聞こえるゾーンから弾き飛ばされるので、おしくらまんじゅうの真っただ中で踏ん張りながら、ボイスレコーダーを持つ腕をできる限り伸ばすしかない。
平昌オリンピック直後は、筆者にまで国内からも海外からも新聞社やテレビ局から「何か羽生選手に関する秘話、ないですかね」と問い合わせが来た。そんなものがあれば、とっくに自分で書いてるわいと心の中で毒づいたが、どこの媒体も必死。他でまだやっていないネタが一言でも欲しいのだ。
これほどまでの社会現象を起こしたフィギュアスケーターは、羽生のほかにいない。今回「もっとも価値のある選手」に羽生が選ばれていなければ、びっくり仰天していただろう。