野球のぼせもんBACK NUMBER
大きな期待、野球ノート、52番。
砂川リチャードが歩む鷹の王道。
text by
田尻耕太郎Kotaro Tajiri
photograph byKyodo News
posted2020/07/11 08:00
飛距離というのは天性の部分が大きい。砂川リチャードにホークスが期待をかける理由はあるのだ。
二軍でも7番、8番が定位置。
長い自主練習期間を経てまず再開された紅白戦。10打席に立ったが5三振を喫した。6月の練習試合でも不振のままで、かなり早い段階でひっそりと二軍落ちしていた。
二軍のウエスタン・リーグも一軍と同じ6月19日に開幕した。リチャードは毎試合スタメンで出場している。しかし、中軸ではない。調整で内川聖一や中村晃が出場していることを加味しても、5番あたりに名前があってほしいところだ。しかし、打順はどんどん下がっていき、7番か8番が定位置となっている。
一軍であんなに気持ちよく打球を飛ばしていたのに、まさか打ち方を忘れたわけではあるまいが、快音がまるで聞かれなくなった。開幕から6試合を終えた時点で18打数2安打、本塁打0と惨憺たる成績だった。
6月28日、今季7試合目のプレーボール前にタマスタ筑後でソーシャルディスタンスを気にしつつ声を掛けた。落ち込んでいないわけではなかったが、意外とすっきりした表情だった。
「打撃の状態は悪いっす。でも、いろんなことを試しています。今は試しまくっているんです。自主練習期間中にトレーニングをしたおかげで筋肉がかなり増えました。それで感覚が変わってしまったのもありますが、今は言われたことをただやるだけでなく、自分で考えたことも取り入れて毎日違うことをやっているんです」
「気にせず思いっきり振っとけ」
育成時代、リチャードはノートに書き留めていたことがあった。
構えるときの立ち方と、バットの出し方についてだ。
「支配下登録されたら、これをやってみようというリストを作っていました。2つだけでしたけど(笑)。育成の時は目の前の結果だけを見ていました。結果を出さないと話にならないじゃないですか。でも、少し先を見据えたことにも挑戦できるなと思っていたんです」
今はそれを通り越して、あらゆるアイデアを打席の中で表現している。支配下になってもまだ二軍選手だ。結果が大切なのは変わりないし、欲だって消えていない。ただ、二軍の首脳陣からは「気にせず思いっきり振っとけ」と背中を押されている。