野球のぼせもんBACK NUMBER
大きな期待、野球ノート、52番。
砂川リチャードが歩む鷹の王道。
posted2020/07/11 08:00
text by
田尻耕太郎Kotaro Tajiri
photograph by
Kyodo News
ホークスの背番号52。
今でもパッと思い浮かぶのは川崎宗則の顔だ。ベビーフェイスな彼はいつも周りに元気を与え、もちろんプレーヤーとしても一流の成績を残してきた。そして、ホークスを飛び出し世界中のどこに行っても愛される姿は、昔から応援する福岡や九州の人々の誇りですらあった。
つい先日、とある企画で久しぶりに再会した。野球に関するインタビューではなかったので近況を深掘りはしなかったが、すっきりしたフェイスラインや洋服の上からでも分かる引き締まった体型は、野球選手のフォルムそのもの。いつでもプレーができる準備を整えていることが窺い知れた。
川崎が米球界から復帰したホークスを退団したのは2018年のシーズン前のこと。それから実質2年間、ホークスの52番は再び空き番号となっていた。
プロ野球の背番号は人格を持つと思っている。ファンは選手の顔を見ずとも、背中に目をやるだけで勝手にイメージを膨らませる。野球というスポーツが時代を超えて、老若男女問わずに長く愛されている証だろう。
52番を引き継いだのは巨漢のリチャード。
2020年の春、ホークス球団はひとつの決断をくだした。
背番号52を未来ある若鷹に継承させることに決めたのだ。
こちらは勝手に、次の52番もやはり細身でスピード感あふれる内野手がいつの日か引き継ぐものだと考えていた。それはまったくの見当違いだった。現在のホークスの背番号52は、身長189cmで体重は余裕で100kgオーバーの巨漢だ。
ザ・長距離砲の砂川リチャードである。
昨年秋の宮崎キャンプの時期にも当連載コラムで取り上げた21歳の右打ち内野手。あの頃はまだ背番号127の育成選手だったが、チーム首脳陣に「飛ばす力はチームでトップクラス。飛距離だけなら一軍」と熱く期待を寄せられ、彼を“鷹のロマン”と紹介した。