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八村塁、4.5kg増でNBA再開へ。
「プレイオフに行けるチャンスある」
posted2020/07/06 20:30
text by
宮地陽子Yoko Miyaji
photograph by
Kyodo News
“It is what it is”
八村塁(ワシントン・ウィザーズ)が取材でよく使う英語のフレーズだ。7月3日に行われたオンライン会見の前半、英語で行われた10分余りの質疑応答でもこのフレーズを2回使っていた。
最初は新型コロナウイルス感染拡大のためにリーグが中断となったことについて語ったとき。2回目は、別の質問で東京オリンピックについて聞かれたとき。延期になったことに「悲しいけれど、僕らがどうこうできることではない」と言い、「もし来年も中止になったとしたら……It is what it is」と続けた。
"It is what it is"は、日本語にすると「それが現実」「そういうものだ」「しかたない」といったような意味合いを含むフレーズだ。
その意味だけ聞くと投げやりに感じる人もいるかもしれない。しかし、少なくともこの受け答えにおいて、八村は決して投げやりではなかった。それよりは、自分ではどうにもならないこと、自分ではコントロールできない現実を受け入れ、そのうえで、今何をやらなくてはいけないのかという方向に目が向いていた。自分でコントロールできることとできないことの切り分けができ、切り替えができることは、アスリートとしても大事なメンタリティだ。
「まったくクレイジーな状況だった」
3月11日に、ユタ・ジャズのルディ・ゴベアが新型コロナウイルスに感染していることがわかりNBAシーズンが突然中断されたとき、八村は、『新人の壁』とも言えるスランプから調子を取り戻したところだった。ここからシーズン終盤、そしてプレイオフ進出を目指してラストスパートと思ったところでの、突然の中断。家にこもり、チーム練習場も使えない日々が続いた。
「まったくクレイジーな状況だった」と八村は振り返った。
さらに、シーズン中断後まもなく、八村にとって「夢で、大きな目標」だった東京オリンピックも延期が決まった。
NBAシーズンに東京オリンピック。目の前から目標がすべて消え、いつ再開されるのか、オリンピックも果たして来年開催されるのか、先がわからない、未体験の世界に突入した。
NBAがシーズン再開に向けて準備し始めてからも、ウィザーズがその再開プランに入れるかどうか、最後までわからなかった。感染拡大のためには参加チーム数を減らす必要があり、16チームでの再開案、20チーム案、22チーム案の3つが検討されていた。中断の時点でNBA30チーム中22位の成績だったウィザーズは、再開組に入るか入らないかぎりぎりのところにあったのだ。