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野村野球の継承を誓う高津新監督。
ヤクルトを導くための“武器”とは? 

text by

長谷川晶一

長谷川晶一Shoichi Hasegawa

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photograph byKyodo News

posted2020/06/25 08:00

野村野球の継承を誓う高津新監督。ヤクルトを導くための“武器”とは?<Number Web> photograph by Kyodo News

開幕2戦目で勝利を挙げた小川からウイニングボールを受け取る高津新監督(右)。

高津臣吾の言葉には力がある。

 野村の薫陶を受けた男が、今季から古巣ヤクルトの指揮官となった。高津もまた、恩師同様に「言葉の力」を信じている。開幕前日、さっそくその本領が発揮される。

 それは選手に対してではなく、ファンに対してのものだった。球団公式ツイッターを通じて、高津は直筆でこんなメッセージをしたためた。

 最初にメッセージを書いた時の東京は、桜は満開でしたが雪が降ってました。あれから約3カ月…みなさんの我慢や努力のおかげで、プロ野球は明日開幕します。しかし、命を救うために頑張ってくださっている、医療従事者のみなさんへの感謝は絶対に忘れません。選手が全力で戦う姿を応燕して下さい。宜しくお願いします。さあ野球を楽しもう!!」

 真摯な思いのこもったメッセージだ。自ら筆を持ち、真っ白な紙に向かい、心を込めてしたためたのだろう。

ファンへの言葉にもこだわりがにじむ。

 ポイントは「応燕」の文字だ。一般的な「応援」ではなく、ヤクルトファンが好んで使う「応燕」という文字をチョイスしているところに、高津新監督の持つ、言葉の微妙なニュアンスに対するこだわりが窺える。やはり、野村の教えを受けた高津もまた、「言葉の人」だった。

 3月10日、当初予定されていた20日からの開幕が延期されたときにも、高津はすぐにファンに向けてメッセージを発している。

「開幕延期は、非常に残念です。お客様も待ち遠しく思っていたと思います。開幕した時に素晴らしいプレーが見せられるように、全力を尽くしてしっかりと準備を進めていきます。ウイルス感染が一日でも早く終息に向かい、開幕できることを祈っています」

 6月10日には、公式ファンクラブ「スワローズクルー」会員限定のビデオメッセージもリリースしている。

「私たちは力の限り戦います。そのためには、スワローズクルーのみなさんの熱いご声援が必要になります。みなさん、今年のスローガンを覚えていらっしゃいますか? 《NEVER STOP 突き進め!》です。このスローガンは“辛いことや苦しいこと、いろいろな思いがありますけれども、前を向いてしっかり進んで行こう”という気持ちや思いが込められたスローガンです。スワローズが一歩でも、半歩でも少しでも前進できるようにファンのみなさんの後押しが必要となります。ファンのみなさんの声援がその一歩を踏み出す勇気となり、力となります。みなさんの熱いご声援よろしくお願いします!」

 折に触れて、自らの言葉をファンに伝えようとしている姿勢がよく伝わってくる。当然、選手たちにも、血の通った言葉を投げかけているであろうことは想像に難くない。

【次ページ】 「もっと野村監督に教わりたかった」

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