甲子園の風BACK NUMBER
『栄冠は君に輝く』『六甲おろし』も。
スポーツ音楽王・古関裕而、傑作十選。
text by
梅津有希子Yukiko Umetsu
photograph byHideki Sugiyama
posted2020/06/23 07:00
甲子園という高校野球の聖地で聴く『栄冠は君に輝く』は格別。来年こそは……。
1964年東京五輪の行進曲『オリンピック・マーチ』も。
2位 『六甲おろし』
1936年、古関が27歳のときに作った阪神タイガース(当時は大阪タイガース)の応援歌、通称『六甲おろし』。現存するプロ野球球団のなかで、最も古い球団歌だ。当時の音源を聴くと、「オウ オウ オウ オウ 大阪タイガース」と歌われており、韻を踏んでいるような印象も受ける。
『エール』では、6月22日(月)に『六甲おろし』が登場。古関裕而がモデルの主人公・古山裕一(窪田正孝)に応援歌の作曲を依頼する球団幹部・掛田寅男役を、なんと「ミスター・タイガース」掛布雅之が演じて大きな話題に。『大阪タイガース』の法被を着て、同曲を高らかに歌い上げた。
世代を超えて歌える親しみのあるメロディーは、ファンじゃなくとも一度は聴いたことがあるのではないだろうか。
3位 『紺碧の空』
ドラマ第8週「紺碧の空」で登場する、タイトル通り早稲田大学の応援歌『紺碧の空』。1927年に発表された慶應義塾大学の応援歌『若き血』に対抗し、早慶戦で苦戦を強いられていた早稲田の応援部が古関に作曲を依頼。1931年に完成した古関の代表曲のひとつだ。
古関裕而の作品を中心に活動する音楽ユニット「喜多三」メンバーで、ご子息である古関正裕氏の公式サイト「古関裕而を歌い継ぐライブユニット『喜多三(KITASAN)』」で、興味深いエピソードが書かれているので引用したい。
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父はそれまで応援歌作曲の経験もなく、かなり苦労したようです。なかなか出来ず、しびれを切らした応援団の学生達が連日大挙して催促に訪れ、安普請の借家の床が抜けるのではないか、と母はヒヤヒヤしていたそうです。
そしてようやく完成した「紺碧の空」が歌われた1931(昭和6)年春の早慶戦で早稲田が久々に勝利したことで、一気に「紺碧の空」は有名となり、第六応援歌として作られましたが、いつしか第一応援歌となりました。
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ドラマでも、応援部による連日の催促の様子が描かれている。
4位 『オリンピック・マーチ』
1964年に開催された、東京オリンピックの行進曲。「マーチ王」と呼ばれたアメリカの作曲者ジョン・フィリップ・スーザからの連想で、「日本のマーチ王」「日本のスーザ」ともいわれる古関会心の同作は、組織委員会からの「日本的なもの」というリクエストに対し、曲の最後に『君が代』の旋律を取り入れている。
晴れ渡る東京の空が目に浮かぶような、華々しく格調高いメロディーは、オリンピックが延期となった今、とりわけ心に響く。来年無事にオリンピックが開催された暁には、このマーチで入場行進を行えばよいのではないだろうか。