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プロからアマ、そして再びプロへ。
高山勝成の数奇なボクシング人生。

posted2020/06/19 19:00

 
プロからアマ、そして再びプロへ。高山勝成の数奇なボクシング人生。<Number Web> photograph by Daiki Tanaka

再びプロに転向し、次戦に向けてひたむきに練習を続ける37歳の高山。2005年にWBC世界ミニマム級王座を獲得し、世界王者の仲間入りを果たしている。

text by

田中大貴

田中大貴Daiki Tanaka

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photograph by

Daiki Tanaka

「僕のボクシング人生は悔いばかりです。悔しさの種類も様々。その悔いを、喜びに変えて終わりたい。この1年、または2年に人生のすべてを捧げる気持ちです。今までのように耐えれば、求めてきた喜びに辿り着けるはず」

 6月の合宿中に行ったインタビュー、ボクシング元世界チャンピオン高山勝成の視線は鋭く、語気は強かった。

 元世界チャンピオンがアマチュアに転向し、東京五輪を目指して戦った2019年。しかし、昨年8月の予選でまさかの敗戦、五輪への出場は絶望的となった。アマチュアとしての目標、そして高山のボクサーとしての夢は一瞬にして終わってしまった、かのように見えた。

「去年8月に負けて、アマチュアとして引退しました。翌月からは次の人生を考え、教員を目指して大学に通う日々でした。けれど講義を受けているうちに“やり残したことがある”と感じ始めた自分がいた。僕はプロボクシングの世界が好きで、やっぱり現役が好きなんだと気付いたんです。今、このまま現役ボクサーから離れたら悔いが残る。1つの悔いも残したくない、その時の最善の、最高の状態で競技人生を終えたいと強く自らに訴えかける、36歳の僕がいました」

引退宣言から数カ月、プロ再転向へ。

 高山は五輪出場の可能性が断たれた後のインタビューで「強い覚悟を持って挑んだ五輪への道、悔いはないので引退する」と話していた。しかし、その数カ月後、年が明けた頃にはプロ再転向へ向けて準備を進めていた。

「14歳から始まったボクシング人生。初めは難しい挑戦だと思うことが幾度もありました。けれど困難だと思い悩む時間も、今振り返ると僕は大好きだった。悔いも難しさも苦しさも乗り越えたい。そのために1分、1秒を大切にしていきたい。世界チャンピオンを目指して闘っていた20代の時と、気持ちはまったく変わらないという自信もあります。やり残したことをつかみ取りたい」

【次ページ】 高山が「やり残したこと」とは?

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