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習近平が熱望、中国W杯出場の秘策。
帰化急増をブラジル出身選手に聞く。
posted2020/06/17 19:00
text by
沢田啓明Hiroaki Sawada
photograph by
Getty Images
カタールや日本などと違って、従来、中国は外国出身の選手を代表入りさせることに消極的だった。ところが、昨年以降、中国リーグでプレーする外国出身選手に次々と国籍を与え、その一部はすでに代表に招集されている。
彼らの中にはアジアのレベルを突き抜けた選手がおり、2022年ワールドカップ(W杯)アジア予選で対戦する国にとって脅威となるのは間違いない。
外国出身で最初に中国代表に招集されたのは、イングランド南部出身のボランチ、ニコ・イェナリス(27)。中国名は李可だ。
父親がキプロス人で、母親が中国人。生後すぐイングランド、中国、キプロスの国籍を取得している。
名門アーセナルの下部組織で育ち、U-17、18、19イングランド代表に招集された。アーセナルでの出場は1試合だけだが、2部ブレントフォードなどで経験を積むと昨年1月、北京国安へ。中国リーグ29試合に出場して2得点をあげた。
昨年5月、中国代表に招集され、9月に始まった2022年W杯アジア2次予選で4試合中3試合に途中出場している。
エウケソンは絶対的レギュラーに。
すでに中国代表の絶対的なレギュラーとなっているのが、ブラジル出身のFWエウケソン(30)。艾克森という中国名を持つ。
動き出しが早く、タイミング良くスペースへ走り込み、右足から強烈なシュートを放つ。長身ではないが、ポジショニングとジャンプ力が優れており、ヘディングによる得点も多い。
19歳でデビューすると2011年、22歳のときリオの強豪ボタフォゴ(現在、本田圭佑が在籍)へ移籍してブレイク。この年9月、ブラジル代表の強化試合(対アルゼンチン代表)に招集されたが、ピッチには立たなかった。
2013年に広州恒大へ移籍金680万ユーロ(約8億2000万円)で移り、中国リーグとアジア・チャンピオンズリーグ(ACL)の2冠達成に貢献。2014年には中国リーグで28試合28得点を記録して得点王に輝き、年間MVPにも選ばれた。2015年にもリーグとACLを制覇。翌年1月に移籍金1850万ユーロ(約22億4000万円)で上海上港へ移ったが、昨年7月、広州恒大へ復帰。推定年俸は、1000万ユーロ(約12億1000万円)だ。
昨年7月に中国国籍を取得し、中国にルーツを持たない最初の帰化選手となった。すぐに中国代表に招集され、2022年ワールドカップ(W杯)アジア2次予選で4試合にフル出場して3得点を叩き出している。