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習近平が熱望、中国W杯出場の秘策。
帰化急増をブラジル出身選手に聞く。 

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沢田啓明

沢田啓明Hiroaki Sawada

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posted2020/06/17 19:00

習近平が熱望、中国W杯出場の秘策。帰化急増をブラジル出身選手に聞く。<Number Web> photograph by Getty Images

ACLでJリーグ勢も対戦してきたリカルド・グラール。彼がもし中国代表に加われば、厄介な難敵となる。

強引なアロイジオも代表合宿招集。

 やはりブラジル出身で、すでに国籍を取得して代表合宿に招集されたFWがいる。CFアロイジオ(31)。中国名は洛国富だ。

 ずんぐりした体格だが敏捷で競り合いに強く、とにかく強引にシュートを放つ。FKの名手でもある。

 ブラジル南部の名門グレミオの下部組織で育ち、2006年、17歳でデビュー。2013年、強豪サンパウロへ移籍すると、ブラジルリーグで11得点。ゴールを決めるとコーナーフラッグへ向かって突進して豪快な回し蹴りを見舞うことから、“ボイ・バンジード”(荒くれ牛)というニックネームが付いた。

 2014年、移籍金500万ユーロ(約6億円)で山東魯能へ移り、2015年に中国リーグで22得点をあげて得点王。河北華夏幸福を経て、今年1月、広州恒大へ移籍した。

 今年4月、中国国籍を取得し、5月に上海で行なわれた中国代表の合宿に参加。今後、2022年W杯アジア予選に招集されるのは間違いない。

 エウケソンはこれまでACLで日本の主要クラブの大半と対戦しており、彼の怖さは日本選手にも良く知られているはずだ。

 一方、アロイジオは山東魯能在籍中の2014年のACLでセレッソ大阪と対戦しただけで、日本ではあまり知られていないのではないか。

 2人ともロマーリオを彷彿とさせる逞しさ、抜け目なさ、勝負強さを備えたストライカーで、日本人選手が苦手とするタイプだろう。

セレソン1試合出場のグラールも。

 この2人も相当な実力者だが、彼らを凌ぐ大物が近々中国代表に招集されそうだ。

 MFリカルド・グラール(29)。中国名は、高拉特という。

 柔らかいテクニックを持ち、絶妙のタイミングで多彩なパスを繰り出し、自らも最前線まで飛び出してゴールを狙う。優れたプレイメーカーにして、危険なストライカーでもある。

 2009年、17歳で小クラブからデビュー。ゴイアスを経て強豪クルゼイロへ移籍して急成長。ブラジル代表に招集されると2014年9月、エクアドル代表との強化試合に途中出場した。この年のブラジルリーグで15得点をあげて連覇に貢献し、ベスト11に選ばれた。

 2015年、移籍金1800万ユーロ(約21億8000万円)で広州恒大へ移り、ACL制覇に貢献。昨年1月にパルメイラスへ1年間の期限付き移籍したが、5月に広州恒大へ電撃復帰。7月に中国国籍を取得し、代表へ招集しても問題がないかを中国サッカー協会がFIFAに確認している。

 もし23歳の若さで中国へ渡っていなければ、ブラジル代表に定着していたかもしれない逸材だ。

【次ページ】 グラールが語る中国からの誘い。

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