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習近平が熱望、中国W杯出場の秘策。
帰化急増をブラジル出身選手に聞く。 

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沢田啓明

沢田啓明Hiroaki Sawada

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posted2020/06/17 19:00

習近平が熱望、中国W杯出場の秘策。帰化急増をブラジル出身選手に聞く。<Number Web> photograph by Getty Images

ACLでJリーグ勢も対戦してきたリカルド・グラール。彼がもし中国代表に加われば、厄介な難敵となる。

W杯は習近平にとっての国家事業?

 ブラジル人選手の中国クラブ移籍の経緯に詳しいブラジル人記者は、次のように説明する。

「このオペレーションは、中国の国家事業の一環なんだ。習近平国家主席はフットボール愛好者として知られ、中国代表がW杯に出場すること、中国がW杯を開催すること、そして2050年までにW杯で優勝することを強く望んでいる。

 主席の意向を汲んで、中国を代表する大企業が出資する広州恒大、北京国安などは莫大な金を使って大物外国人選手、外国人監督を獲得し、自クラブのみならずリーグ全体のレベルを向上させてきた。

 しかし2002年大会以降、中国はW杯に出場しておらず、2022年W杯アジア予選でも苦戦している。そこで中国サッカー協会は『外国出身の選手は代表に入れない』という従来の方針を撤回し、5年以上中国リーグでプレーする外国人選手の中で優秀な者をピックアップし、クラブに大幅昇給をオファーさせて選手に中国への帰化を促している。

 中国のクラブが外国人選手に支払う報酬は、世界最高レベルだ。長期間、中国でプレーする外国人が多く、そのこともこのプロジェクトの遂行を容易にしている。

 これまでにこのオファーを受け入れたブラジル人選手は5人だが、今後、さらに増えるのではないか」

2次予選は2位狙いが現実的だが。

 2022年アジア2次予選は、40カ国が5カ国ずつ8グループに分かれ、各々、ホーム&アウェーで対戦。各グループの1位国、そして2位国のうちの上位4カ国の計12カ国が最終予選に進む。中国はグループAで4試合を終えて2勝1分1敗の勝ち点7。首位シリア(5戦全勝)より消化試合が1つ少ないが、勝ち点8差をつけられている。

 シリアは、残り3試合のうちモルディブ、グアムとの対戦がある。この2試合で勝ち点6を加えれば、中国は残り4試合を全勝しても追いつけない。

 各グループの2位国のうち、現時点で中国は7位だが、4位とは勝ち点2の差しかない。中国の残り試合はホームでのモルディブ戦、アウェーでのグアム戦、ホームでのフィリピン戦、ホームでのシリア戦で、その時点でシリアの首位突破が決まっているはず。全勝することは十分に可能で、そうなれば2位で最終予選進出の可能性は高くなる。

 その場合、最終予選では参加12カ国が6カ国ずつ2グループに分かれるから、日本代表が中国代表と同グループとなる確率は50%である。

 ブラジル出身の強力アタッカートリオを擁しているであろう中国代表が、もし同グループになったら――日本代表にとって極めて厄介な相手となるのは間違いない。

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