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ホッケー永井姉妹が語る五輪延期。
喪失感の中で気づいた武器とは。
text by
内田暁Akatsuki Uchida
photograph byAkatsuki Uchida
posted2020/06/15 07:00
(右から)日本代表主将のDF内藤夏紀、司令塔の永井葉月、葉月の姉でソニー主将の永井友理、点取り屋でドリブラーの清水美並。
インスタ開設と“姉妹”の覚悟。
そのきっかけ作りとして、妹を誘い、姉妹でインスタグラムのアカウントを立ち上げた。そうして少し視点を変えると、今まで嫌で仕方なかった“姉妹売り”が、ホッケーを世に広める武器にもなるのだと気付く。
今回、オリンピックの延期で妹が深く落ち込んだ時にも、彼女はその武器を活用した。新型コロナによる自宅待機中、インスタグラムの姉妹アカウントで、ホッケーに打ち込む中高生向けのトレーニング指導を始めたのだ。
折しも中高生たちも、次々に大会が中止になり目標を失っていた時分。その後進たちに直接アプローチすることで、辛いのは自分だけではないこと、そして何より、いかに自分が中高生たちに憧れられているか、どれだけホッケー界に必要とされているかを、妹に知ってほしかった。
その意図が、どれだけ伝わっていたかは分かりませんが……と姉の友理は笑う。ただ、この頃から妹の葉月の表情が柔らかくなったのを、姉は見逃してはいなかった。
久々の練習再開に思ったこと。
6月1日――。2カ月近くに及ぶスタジアムの閉鎖期間を経て、“ソニーHC ブラビア レディース”の全体練習が再開した。
トレードマークのヘアバンダナで髪を上げ、チームメイトたちと久々にフィールドに立った時、葉月は改めて「このチームにいるからホッケーも楽しいし、代表も目指せるんだな」と凄く感じたのだと言う。
オリンピックで良い結果を残したい。何より、ホッケーの楽しさを多くの人に知ってもらいたい――。
見慣れたライトブルーのホームグラウンドから、決意も新たに歩み始める。