熱狂とカオス!魅惑の南米直送便BACK NUMBER
15歳カズの指導者や恩人が懐かしむ
跨ぎフェイント、ヘアスタイル秘話。
text by
沢田啓明Hiroaki Sawada
photograph byHiroaki Sawada
posted2020/06/12 19:00
カズがサンパウロで行きつけにした理髪店にて。右から2人目が店主の木村光子さん。
まさかストライカーに変身するとは。
――北部のCRBでの様子は?
「クラブが本拠を置くマセイオには、きれいなビーチがたくさんある。練習が午前中だけのときは、午後はビーチでくつろいでいた。マツバラと違って開放的な都会で、生活も楽しめていたんじゃないかな。
試合で活躍して、地元では大変な人気者だったから、本人も気分が良かったと思う」
――ブラジル時代のカズから、彼が日本へ帰ってからの姿を想像できましたか?
「全然(笑)。純然たるチャンスメーカーからストライカーに変身するとも、日本代表に入るとも予想していなかった。大変な努力と並外れた根性が、不可能を可能にしたんだろうね」
田原俊彦とシャネルズが好きで。
ブラジルに滞在した8年近くの間、時間ができればサンパウロの東洋人街リベルダーデを訪れて気分転換をした。その際、必ず立ち寄った場所がある。リベルダーデの中心部にある木村光子さんの理髪店だ。
木村さんは熊本出身で戦後、ブラジルへ移住。苦労の末、自分の店を構えた。カズにとって、「ブラジルのお母さん」のような存在だったようだ。
――素顔のカズは、どんな若者でしたか?
「明るくて、とってもいい子。田原俊彦とシャネルズが好きで、歌いながら、踊りながら店へ入ってきたこともあった(笑)。
ファッションや髪形にかなり気を使っていてカッコいいので、女性の従業員から人気があった。みんなカズの髪を切りたがっていたけど、あるとき、ひとりの従業員が頭の横を刈りすぎて彼が少し不機嫌になったの(笑)。それ以来、いつも私が切っていた」
――修行中や若手プロ時代、かなり苦労したようです。
「そうでしょうね。日本とは言葉、食事、気候、習慣、考え方などすべてが全く違うから。
サッカーでも苦労したんだろうけど、カズちゃんはそれを絶対に人に見せなかった。つらいことがあっても、いつも明るく振る舞う。この子はすごく根性があるな、他の若い日本人とは全然違うな、と思った。
私はサッカーのことは全くわからないけど、あれだけ強い気持ちがあって、人一倍努力したら、何をやっても成功しないはずがない、と思っていた」