スポーツはどこへ行くBACK NUMBER
新型コロナ禍に揺れたBリーグ。
三密競技の出口戦略を考える。
text by
石井宏美Hiromi Ishii
photograph byB.LEAGUE
posted2020/06/04 11:30
約2週間ぶりに再開となった3月14日の千葉vs.宇都宮の試合は、無観客で行われた。
チーム間によって温度差があった当初の対応。
当初は各クラブによって認識にばらつきがあったと数野はいう。
例えば、まったく感染者が出ていなかった地域では、もちろん危機感がないわけではないが、試合を履行することはまだ可能だという判断になる。一方で、感染者が多数出ている地域や、親会社のリスクマネジメントが強く影響するクラブでは、試合の開催は危険なのではないかという見解に。
そうした状況を踏まえた上で、リーグは全体的なコンセンサスを取りながら、まずは試合の日程を後ろにずらすことで、(新型コロナウイルスの)ピークをかわし、公式戦が履行できる環境を作ることにフォーカスした。
各クラブに与えられたホームゲームを履行することを優先した決断ではあったが、チャンピオンシップやファイナルなどのポストシーズンは事業性収益も見込めるため、そこに進出可能性のあるチームとそうではないチームとの間には多少なりとも意見の相違も生まれたという。
「現場とのギャップが生まれていたのかなと」
その後、3月14日には無観客試合で再開するが、選手や審判の発熱により、一部試合が中止となった。
選手やコーチから不安を訴えるコメントも相次ぎ、各クラブに所属する外国籍選手の中には帰国を希望する選手も現れた。また、無観客試合の直前となる11日にはNBAの中断も発表され、試合開催への抵抗が強まっていった。
「(それまで)我々が向き合っていたのは各クラブの実行委員でした。もちろん、実行委員の方々は現場のことを把握し、意識されたうえで意見をおっしゃっていただいていたと思います。ただ、経営者として1つの会社を背負い、維持していかなければならない責任も強く、そこで現場とのギャップが生まれていたのかなとも思います。
無観客試合後には選手ともコミュニケーションを行ったのですが、我々が認識していた以上に、彼らは感染リスクを懸念し、不安を抱えていました。それらを総合的に判断した結果、コロナ禍の状況下でバスケを続けるのは困難なのではないかと痛感したのです」(数野)
4月4日の再開を目指し選手会などとも協議を重ねたが、新型コロナウイルスをめぐる情勢が好転することはなかった。3月27日の臨時理事会で、2019-20シーズンの終了が満場一致で決定した。