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ラグビーにおける「ロック」の特権。
大野均の去り際に、胸の奥で敬意を。
text by
藤島大Dai Fujishima
photograph byAFLO SPORT
posted2020/05/27 18:00
大野均にとって最後の代表戦となった2016年スコットランド戦。献身的なプレーで日本ラグビーの発展に大きく貢献した。
史上最高のロック、小笠原博。
最後に。日本ラグビー史上最高のロックのひとりを紹介しよう。
小笠原博。いま77歳。1968年のオールブラックス・ジュニア戦勝利(23-19)、1971年の対イングランドの双方ノートライの惜敗(3-6)当時のジャパンの大出力エンジンだった。青森の弘前実業高校では野球の投手、自衛隊でラグビーに転じ、近鉄の時代を築いた。ワールドや立命館大学の指導でも実績を残している。
テストマッチのたびに試合後のシャワー室で動けなくなり病院へ運ばれた。「全身打撲に全身痙攣」。診断をつけるなら「オールアウト(出し切り)」か。たくましく、うまく、賢かった。
5年前。屋久島に本人を訪ねた。現役時代に対戦国と交換した記念のジャージィやネクタイが家の中に見当たらない。すぐ誰かにあげてしまうらしい。地元の仲間が教えてくれた。「えーっというような場面でイングランドのジャージィもどこかへ消えていきました」。
小笠原博は表情を変えずに言った。
「頭の中にあるから」
ロックだぜ。