“ユース教授”のサッカージャーナルBACK NUMBER
浦和が惚れた大久保智明のドリブル。
ヴェルディ育ち、大学で磨いた1対1。
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph byChuo University
posted2020/05/26 11:40
浦和内定が決まった中央大MF大久保智明。状況判断に優れた左利きのドリブラーだ。
ヴェルディスタイルとの共存。
中央大で進化を遂げた自分の足元をふと見ると、あれだけ苦しんでいた「ヴェルディらしさ」がベースになっていることに気づいた。
「ヴェルディで学んだ駆け引きは凄く役に立っているなと。僕の理想は中島翔哉選手。アタッキングエリアでのドリブルとパスの使い分けがうまく、そこまでのアプローチも工夫している。ヴェルディで磨いたパスとオフの動きなど、ボールを奪われないプレーと、中央大で磨いたドリブルを融合させることで、自分は希少な『局面でのドリブラー』になれると思っています」
ヴェルディスタイルからの脱却ではなく、ヴェルディスタイルとの共存を実現させたのだった。
「今はもうワクワクしかない」
大学3年となった2019年。J1クラブが争奪戦を繰り広げる存在にまで成長した彼は、「大学4年の時にはもうプロデビューしたいと思っていたので、迷いませんでした」と、'19年7月9日に真っ先に声をかけてくれた浦和入りを決断し、加入内定を発表した。
「改めてレッズの歴代ドリブラーである原口元気選手、関根貴大選手とは違うドリブラーだと思いました。僕は『局面でのドリブラー』。シンプルに行くけど、そのエリアに入ったら一気にドリブルを仕掛けるタイプだと思っています」
9月4日のルヴァンカップ準々決勝1レグの鹿島アントラーズ戦ではベンチ入りを果たしたが、その後に左膝の負傷が発覚し、現在はリハビリをこなす日々が続けている。
「昨日MRIを撮ったら、若干痕が残っているくらいなので問題はないと思います。完治に向けてリハビリに集中しているところです」
リモートインタビューの画面越しに見た彼は笑顔だった。
「今はもうワクワクしかないです。レッズで試合に出ることは難しいけど、実現できたらこれほど大きいことはありません。左利きの『局面ドリブラー』としてチームの勝利に早く貢献したい。それに純粋にあの埼玉スタジアムのサポーターの中でプレーしたいという思いがあります」
自分が組織の中でどう輝けるか。苦悩の末にもがく自分と純粋に向き合えるようになった心が得たのは、打開策のヒントは自分の内側にあるということ。ユーティリティーからドリブラーへの変貌。大久保智明は自らの生き様を映し出したプレースタイルを、ピッチの上で示さんとしている。