バレーボールPRESSBACK NUMBER
遠慮ばかりだったリオ五輪から4年。
遅咲きのエース石井優希の“個性”。
posted2020/05/21 11:40
text by
米虫紀子Noriko Yonemushi
photograph by
Itaru Chiba
喜びと戸惑い。新型コロナウイルス感染拡大防止のための活動自粛期間を経て、1カ月ぶりにボール練習を再開した久光製薬スプリングスの石井優希に電話で話を聞くと、そんな複雑な感情が伝わってきた。
4月8日から1カ月間は、活動が自宅での自体重トレーニングやランニングに限られた。石井は、「これだけ長くボールを触らなかったことは初めて。動けないし、家からも出られないので、ストレスは溜まりました」と言う。
それでも、ちょうど石井の29歳の誕生日だった5月8日に、久光製薬はボール練習を再開。寮生とそれ以外の選手に分けて1日おきに、まずは対人パスやサーブレシーブなどから行なっている。
「完全に感覚が狂っています」
待ちに待ったボール練習だったが、ブランクを痛感させられて愕然とした。
「みんな1カ月間ボールを触っていないからもう、素人レベル、まではいかないけど、完全に感覚が狂っています。特にアンダーハンドパスが一番ひどい。組んでいる手の感覚からしておかしいから、両手にうまく当たらないし、ボールの軌道も全然つかめなくて。足も一歩がなかなか出ない。筋肉量が落ちているから、思うように動けないんです。自重でのトレーニングはやっていましたけど、重りがない分、できることは限られますし、バレーボールのプレーで使う筋肉はまた違う部分もあるので……」
積み上げてきたものが崩れてしまった焦りはある。ただ、練習を重ねるにつれ、「自然と動けるようになってきている」と手応えも感じている。今後はジャンプ動作も取り入れていく予定だ。
「体がなまっているし、怪我が怖いので、徐々にやっていきたい。(国際)大会がないので、焦らずに上げていきたいですね」