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タカマツが「金」を意識した瞬間。
バド女子ダブルスの系譜は東京へ。
text by
石井宏美Hiromi Ishii
photograph byShinya Mano/JMPA
posted2020/05/09 09:00
リオ五輪で金メダルを獲得した高橋礼華と松友美佐紀。ロンドン五輪で銀メダルを獲った「フジカキ」の活躍が刺激となった。
スエマエが史上最高の4位入賞。
この大会でオグシオを上回ったのが、末綱聡子と前田美順の「スエマエ」だ。ペアを結成した2004年からオグシオ陰に隠れ、北京五輪前年までは日本の3番手だったものの、最大2組しか出場できない状況で最後の最後に出場権を獲得し、オリンピックの切符を手にした、こちらも実力派だ。
準々決勝では当時の世界ランキング1位、しかもアテネ五輪で金メダルを獲得している中国のヤン・ウェイ、チャン・ジーウェン組と対戦。会場は多くの中国人観客が占める完全アウェー状態の試合となり、第1ゲームを8-21と一方的なスコアで落としたものの、第2、3ゲームを奪取し、大逆転。最後まで集中力を切らさず戦った2人はメダル獲得へ大きく前進する勝利を挙げた。
続く準決勝では世界ランキング4位の韓国ペアに、そして3位決定戦でも中国ペアに敗れてメダル獲得とはならなかったものの、日本バドミントン史上最高位となる4位入賞。日本バドミントン界の歴史に風穴を開けた。
スエマエを間近で見てきたフジカキ。
その後もスエマエは、2011年世界選手権で銅メダル、同年のBWFスーパーシリーズファイナルズ3位など、女子ダブルス界でトップペアとして活躍。2012年ロンドン五輪にも出場した。自身2度目のオリンピックは得失ゲーム差で予選を勝ち上がれなかったが、同大会では「フジカキ」こと藤井瑞希と垣岩令佳組が、北京五輪の成績を上回る銀メダルを獲得した。
フジカキの2人にとって幸運だったのは、当時所属チームの先輩だったスエマエが北京五輪4位入賞を果たした姿を間近で見られたことだ。同大会を現地で観ていた2人にとって、先輩ペアの戦う様は大きな刺激となった。
さらに所属チームのみならず、代表選考レースを戦うなかで得られたものも大きな財産になっただろう。五輪という目標が身近になり、先輩ペアを尺度にすることで世界との差を計りながら、自分たちに足りないものを補うことができた。結果、先輩2組が積み上げてきた歴史を受け継ぎながら、先輩たちが届かなかった表彰台へとたどりついたのだ。