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伝説となった2008年バスケ全中決勝。
富樫勇樹と田渡凌、「風と刀」の死闘。
posted2020/05/02 11:50
text by
青木美帆Miho Awokie
photograph by
Izumi Nakagawa/NIPPON BUNKA PUBLISHING
「私の一番」。今回、編集部からこのようなテーマで依頼を受け、今まで仕事として立ち会った様々な試合を思い浮かべてみた。
しかし、結局のところ、この試合以上に私を衝き動かした一戦は存在しないと気づくのに、そう時間はかからなかった。
2008年8月25日。新潟で行われた全国中学校バスケットボール大会(通称「全中」)男子決勝、本丸中×京北中。
こたつ記事の執筆が収入の大半を占めるバスケットボールライター(自称)から脱却するため、「中学生専門のバスケットボール雑誌」という超ニッチな雑誌の編集者に転じて、数か月。
生まれて初めて見た中学バスケの全国大会で、こんなにとんでもないものを目撃することになるとは思ってもみなかった。
頭が沸騰しそうになる32分間。
とにかく、両チームのエースがとんでもなかった。
本丸中の富樫勇樹と、京北中の田渡凌。
2人が繰り出すプレーの1つひとつに、頭が沸騰しそうになる32分間だった。
これは本当に中学生の試合なのだろうか。数週間前に取材したばかりのインターハイでも、彼らほどのうまさを持った選手はそれほど多くなかったのではないだろうか。何度も何度も、そう思った。
言うまでもなく、本丸中の富樫勇樹は、現在の日本代表や千葉ジェッツで活躍するあの富樫であり、京北中の田渡凌は横浜ビー・コルセアーズのキャプテンで、『テラスハウス』への出演でも話題を呼んだ田渡である。
「あの試合を生で見られたことは、すごくラッキーなことだと思うよ」
先輩編集者からそう言われたのは、新潟から東京への帰り道だっただろうか。あれから10年以上が経った今、改めてその幸運を噛みしめずにはいられない。