ラグビーPRESSBACK NUMBER
絶叫、熱狂、涙、ヤジをも知る人は
無観客でも同じように戦えるか?
text by
藤島大Dai Fujishima
photograph byYoshio Tsunoda/AFLO
posted2020/05/02 11:30
1月、5万7345人の大観衆の前で行われた大学ラグビー選手権決勝。選手たちのプレーの1つ1つに、熱狂した。
「わが五美大リーグは、常に無観客でした」
T・Fという知人がいる。広い意味での同業者である。この人物、若き日、日本大学芸術学部ラグビー部(日本大学ラグビー部にあらず)の超のつく快足バックスだった。彼なら美術大学リーグで「無観客」を味わっているはずだ。さっそく問い合わせるとメールを返してくれた。
「わが五美大リーグは、双方のマネージャーを数に含めなければ、常に無観客でした。いっぺんムサビ(武蔵野美術大学)での試合で体育館から気の毒そうな視線がこちらへ向けられた記憶があります。最寄駅からバスで20分の山の中でも戦った。グラウンドに岩が突き出ていました。あれは完全に無人の世界でした」
そうか。すべての公式戦が無観客の青春もあったのだ。いつも観客ゼロなら、いつも観客に見つめられる選手と同じように燃えられるのか。また、わからないことが増えた。