自分らしく体操をやれば、点数も自然とついてくる。

　試合後にはすがすがしい表情を見せた。

「会場練習の時点から懐かしい感じでした。大げさに言ってしまえば1回、引退した選手のようだったんです。今回はこの会場のゆかで伸身リジョンソン（シライ3）をやりにきたといっても過言でないくらい、それに集中していました。今シーズン1回もつかうことができずに悔しい思いをしていた技でしたから」

　吹っ切れた理由を聞かれると、考え方の転換があったと明かした。

「今シーズンはケガもあったのですが、その陰に隠れて、どうしたら点数を取れるかと考えることが多かった。でも、ケガをしているときに思ったのは、一番良かったときの自分は、技が入っていたときだということです。

　いろいろな技をやめて点数を取りに行くのは面白みがないというか、自分の体操とちょっと違うなと。

　自分らしく体操をやれば、点数も自然とついてくると思ったし、実際にちゃんと動けているときは結果もついてきていました。採点の傾向や基準など、周りに合わせるのではなく、自分が一番良いときの体操に戻してみて、そこでどういう点が出るのかを考えようと思いました」

“宝刀”を得たときと同じ会場で。

　白井は自らの原点に立ち返っていた。豊田国際競技会は、'15年に白井が初めて「伸身リジョンソン」を成功させ、「シライ3」の名がつくことになった思い出深い大会だ。

　リオ五輪で日本に金メダルをもたらした“宝刀”を得たときと同じ会場で、白井は見事に復活したのだった。しかも、最後に入れた「4回ひねり」も'19年初だった。

「今シーズン一度もできなかったことを2つ同時にできた。来年に向けてまだまだしっかりもどしていけるという可能性を感じる試合でした」

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