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イチローの辛辣で率直な言葉たち。
傍で聞き続けた人にだけ見えたもの。 

text by

生島淳

生島淳Jun Ikushima

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posted2020/04/26 09:00

イチローの辛辣で率直な言葉たち。傍で聞き続けた人にだけ見えたもの。<Number Web> photograph by AFLO

イチローの言葉は刺激に満ちている。その内側に込められたものを、見逃さずに受け取りたい。

イチローの辛辣な言葉が印象に残る。

 本書では、メジャーリーグの現場でも「本末転倒」を招いていることを示す。

 たとえば2死三塁の場面で、強烈なセンターライナーでアウトになってチェンジになってしまうのと、イチローがしばしば見せる遊撃手の後方に打球をポトンと落とし、1点を挙げるのと、どちらが評価されるかというと、強烈な打球を放ってアウトになった前者が評価されるケースがあるという。

 イチローは、このような状況に対して辛辣な言葉で答えている。読者の方は、ぜひとも本書を手に取って、イチローの激しい言葉を受け止めて欲しいと思う。

神格化のベールの下の本当の姿。

 また、イチローを取り巻くマリナーズの生々しい現実も浮かび上がる。2008年、球団は61勝101敗、6月にはジェネラルマネージャーと監督が解任されていた。この年の5月26日のレッドソックス戦、イチローにしては珍しく外野フェンスに激突して、そのあと倒れこんだイチローが、しばらく立ち上がれないことがあった。

 丹羽さんは、イチローがリスクを負ったプレーをした背景には、

「そもそもクラブハウスの空気は最悪で、それも一因となったか」

とさらりと書く。

 このあたりの皮膚感覚は、定点観測をしている人でないと、分からない。私としても、そういうことだったのか、と合点がいった。

 イチローはメジャーリーグでのキャリアを通して神格化されていった面があったが、『イチローフィールド』を読むと、野球が大好きな職人気質の人だったことが浮かび上がる。

 そうした姿を傍で見られた丹羽さんは、幸せだっただろうなと思う。

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