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4月10日、特別な喝采を浴びた19歳。
松山英樹がマスターズで見せた非凡さ。
text by
雨宮圭吾Keigo Amemiya
photograph byAFLO
posted2020/04/10 20:00
2011年のマスターズでベストアマに輝いた松山英樹。今年は大会史上初の秋開催となる。
非凡な才を持つ青年へ拍手と歓声。
記念すべきスタートホールではティーショットを右のバンカーに入れたが、辛くもパーをセーブして滑り出した。「あれで気分が楽になった」と4番ホールでは20mのロングパットを沈めて初バーディーを奪った。最後は3連続ボギーもあったとはいえ、一時は4位に浮上するなど「奇跡に近い」というイーブンパーの31位で初日を終えた。
2日目も73と踏ん張って、出場したアマチュアで唯一の予選通過を決めた。この時点でベストアマは確定。同学年の石川遼が憧れを公言していたオーガスタの舞台。それまで松山はさほど意識していなかったようだが「マスターズに遼が憧れる気持ちが分かった」と徐々にオーガスタの魅力に憑りつかれていった。
さらに、3日目には5バーディー、1ボギーの68の好スコアを叩き出し、43位から18位までジャンプアップ。マスターズには数多くの日本人トッププロが挑んできたが、60台をマークしたのはこの時の松山がようやく9人目。まだ19歳だった青年は、この時点ですでに将来につながる非凡さを示していた。
最終日の18番ホール、このホールはティーグラウンドからグリーンまで10m以上打ち上げていく急坂になっている。疲れた体に鞭打ってたどり着いた頂上で松山を待っていたのは、グリーンを幾重にも取り囲んだパトロンからの拍手と歓声。その中でバーディーを奪うと、その祝福は背筋がぞくぞくするほど大きなものになった。
こうして4日間を戦い終えた松山はすっかりオーガスタに魅せられていた。
「また回りたいなあ。今から回れないかな」
通算1アンダーの27位でベストアマを獲得。表彰式に先立ってバトラー・キャビンで行われたテレビ用のセレモニーに、前年優勝のフィル・ミケルソン(米国)やこの年の優勝者となったシャール・シュワルツェル(南アフリカ)と一緒に参加した。スター選手の横にちょこんと座って少し所在なげではあったが、こうした経験がキャリアの大きな礎となった。
ホールアウト直後は「こんなに疲れた1週間もなかった」と話していたのに、「また回りたいなあ。今から回れないかな」と名残惜しそうにしていた松山。その願いは、その後、自らの力で叶えていくことになる。
プロ転向直後の2013年大会を除いて毎年出場を果たし、2015年は5位、2016年は7位。再びオーガスタの夕日を浴びて表彰式に立つ日も訪れるのではないか。アマチュアで喝采を浴びたあの日から9年、松山はあの時以上にそう期待させる存在であり続けている。