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関根潤三さんとの中継は愉しかった。
実況デビューの日の優しさと名台詞。
text by
田中大貴Daiki Tanaka
photograph byKyodo News
posted2020/04/12 11:30
解説者としても人気を博した関根潤三さん。2003年には野球殿堂入りも果たした。
心地よかった「関根ワールド」
それからは関根潤三さんとの野球中継は本当に愉しかった。放送席全体が魔法をかけられたような感じがして「関根ワールド」に誘い込まれる時間がとても心地よかった。
「今日は神宮の空を飛ぶ鳥がライトからレフト方向に舞い上がるように飛んでるよね。こういうときは高く上がった打球が良くホームランになる日なんだよねえ」
「指導者はすぐに選手の悪いところを言うでしょ。違うのよ、気付かないうちに悪いところを直してあげるのよ。これが指導者よ」
「大卒なのに泥臭いねえ、だから青木宣親は活躍しますよ。顔にボールをぶつけてでも塁に出てやろう。そんな顔してる奴は必ず活躍するもんですよ」
心に刻まれる名解説が沢山ありました。法政大学時代からプレーしてきた神宮球場の特徴を把握し、指導者として選手のどこを見ればいいか熟知されていました。
解説者・関根潤三の物腰は柔らか。常に優しい。そして仕事を共にする相手のことをさりげなく良く見ている方でした。
二刀流じゃない、野球をやっている。
アメリカ大リーグでプレーする大谷翔平が二刀流で注目され始めた時、「僕は二刀流をやっているとは思っていません。投げて打って走って。野球をやっているんです」と話してくれたのが印象的でした。
そう言えば関根さんもこんなことを言っていました。
「僕はね、投手も打者もやりましたよ。なんで両方やったんですかって? だって野球なんだもん。そりゃ両方やりますよ。やりたいんですもん」
名台詞、名解説。メディアの世界で関根さんに触れた方は誰もが魅了されたに違いない。選手、監督として時代を築き、解説者としても放送の世界で時代を築いた方でした。
関根さん、愉しかったです。本当に有難うございました。