本心から「優勝できるぞ」と思っていましたか？

　前述したように'80年代のヤクルトは本当に弱かった。

　低迷期の真っ只中にある底抜けの明るさ。そして、やがて訪れる'90年代、野村ヤクルトの希望の光がうっすらと差し込み始めていたのが関根ヤクルト時代だった。改めて、関根さんに問う。

――3年間の監督時代、本心から「優勝できるぞ」と思っていましたか？

　質問を聞くとすぐに関根さんの頬が緩んだ。

「いや、思わなかった」

　続く言葉を待つ。関根さんの表情は変わらない。

「監督としてはゼロですよ。勝てねぇんだから……」

「……優勝できるとは思わなかったけど、優勝できるチームにするために選手を育てなきゃいけないとは思っていたかな。

　だから、ファンの人にも選手の人たちにも申し訳ないと思うよ。だって、オレのとき優勝してないんだから。ろくな仕事をしてないんだから。やっぱり、指導が十分じゃなかったんだろうね……」

　目の前で申し訳なさそうな表情を浮かべている関根さんを見ていると、インタビュアーであることを忘れて、「いや、そんなことは絶対にないです。関根さんのおかげであの当時のヤクルトは本当に楽しかったし、後の黄金時代につながったんですから」と力説してしまった。

　それでも、関根さんは諭すような口調で優しく続ける。

「いやいや、本当にすまなかったね。弱くてさ。でも、あの頃の選手は本当に一生懸命やっていたからね。だけど、監督としてはゼロですよ。勝てねぇんだから……」

【次ページ】　温かくほのぼのとした「ヤクルトらしさ」。