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朝乃山の大関昇進は大阪で……。
元朝潮・高砂親方、3度目の涙。 

text by

佐藤祥子

佐藤祥子Shoko Sato

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photograph byKyodo News

posted2020/03/31 11:30

朝乃山の大関昇進は大阪で……。元朝潮・高砂親方、3度目の涙。<Number Web> photograph by Kyodo News

自身と縁深い大阪の地で、愛弟子の朝乃山の大関昇進の伝達を受ける高砂親方。

若い衆を自らねぎらう朝乃山の姿が。

 千秋楽翌日の一夜明け会見に、朝乃山とともに臨んだ高砂親方は、「こうべを垂れる稲穂かな、じゃないけれど、己を磨かないといけない」と、この時もまた引き合いに出していたものだ。傍らの師匠の言葉を、素直で実直な朝乃山は胸に刻んでいたのだろうか。

 伝達式も終わって人が掃け、ふと気がつくと、紋付き袴を脱いでリラックスしている新大関が、「どこかいいランチの店、ないですかねぇ」と言いながらスマホを操作している。せわしく片付けに動き回る付け人たちを見やり、

「あ、これから6名大丈夫ですか? はい、名前は石橋(本名)です。電話番号は……」

 人の手を借りずに自ら予約電話をし、若い衆を中華料理屋で”接待”するのだった。

今度は“朝乃山”の名前を大きく。

 朝青龍を横綱に育て上げたあと、高砂親方は「次は朝潮の名前を継ぐ、日本人横綱を育ててみたい」との夢を口にしていた。しかし、今は、その思いも少々変化している。

「朝潮太郎の名は、もう自分の代で終わりでもいいと思っている。朝乃山という、亡き恩師の名前の入った大事な四股名を変えさせるなんてできないよ。朝乃山英樹という名前はいろんな縁で名付けてもらって、今、こうして大関になれた。自分で“朝乃山”の名前を大きくしていけばいいんだ。四股名とはそういうものだから」

 師匠の停年退職まで、あと4場所。朝乃山は「もうひとつ上の番付を狙いたい」と表情を引き締めている。

 高砂親方4度目の「最後の涙」は、いつ見られるのだろうか。

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