熱狂とカオス!魅惑の南米直送便BACK NUMBER
花見やK-1開催にブラジルで疑念が。
日本の特異さと本田圭佑のツイート。
text by
沢田啓明Hiroaki Sawada
photograph byREUTERS/AFLO
posted2020/03/30 20:00
本田圭佑のブラジル初戦、試合前に選手は抗議の意味もかねてマスク着用でピッチに入った。この辺りも国による意識差なのかもしれない。
「日本人は思慮深いと思っていたが」
25日以降、東京などでは感染者が急増しており、首都圏では28日と29日の外出自粛を要請した。さりとて、不要不急の外出をしたからといってフランスや英国のように罰金などの刑罰が科されるわけではない。
知り合いのブラジル人からは前述した花見やK-1開催について「日本人は何事にも慎重で思慮深いと思っていたが、どういうことか」と電話で聞かれて「大多数の人はそうだと思う。だが他国と同様、そうでない人が一定数いる」と答えるしかなかった。
「外へ出て働かないと生活が維持できない」という人や困難な状況にある企業に対しては、政府なり地方自治体なりがしかるべき援助なり補助を行なうべきだ。日本を含む各国政府は、種々の緊急経済対策を打ち出しつつある。
選手らの安全が確保されるならば。
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その一方で家にこもってストレスを溜めがちな人々には、スポーツを含む娯楽が必要なのは間違いない。
当面、プロ野球は4月24日、J3は4月25日、J2は5月2日、J1は5月9日の開幕を目指しているという。
欧米や中南米のようにクラブやチームの活動を完全に停止してしまうと、シーズン開幕が決まってから1カ月から1カ月半の準備期間を要する。しかし日本のように選手が練習を継続していたら、準備期間が短くて済む。
とはいえアメリカやドイツ、英国の専門家の意見を総合すると、ウイルスの治療方法が確立されない限り、全人類約77億人の約60%が感染し、うち約20%が中程度以上の症状を示し、その約25%が重篤となって入院し、さらにそのうちの約10%が死亡するという。
つまり全人類の0.3%、すなわち約2310万人が死亡する可能性があるというのである。
この記事を書いている日本時間の3月30日午前3時現在、世界の死亡者数は3万3509人(ジョンズ・ホプキンス大学集計)。これだけでも身の毛がよだつ数字だが、約2310万人に比べるとまだ序の口ですらない。
市民生活と経済への悪影響をできるだけ避けようと、日本は大都市のロックダウンを行なうことなく感染の爆発的拡大を抑えようとしてきた。これは世界でも極めて特異な挑戦だ。
そんな困難な状況で苦しむ人々を、フットボールをはじめとするスポーツが何かを成し得て、慰めることができるのか。
日本、そして世界のスポーツ界は今、その存在意義を問われている。