プロレス写真記者の眼BACK NUMBER
ライガーが語る女子プロレスの世界。
「岩谷麻優にオカダ・カズチカを見た」
text by
原悦生Essei Hara
photograph byEssei Hara
posted2020/03/15 19:00
観客席の上段で蹴落とされて解説のライガーの席まで転げ落ちていった岩谷麻優。
最初は「ただの乱闘」と切って捨てたが……。
メインになるとライガーは放送席に戻った。
岩谷麻優、鹿島沙希によるランバージャック・マッチ。「木こりたちのケンカ」と呼ばれる方式の完全決着戦だ。
本来は場外に逃げたらセコンドが力ずくでリングに押し戻すというものだが、行われたのはそんなランバージャックではなく、“乱闘性”の高い、異様に過激なものになってしまっていた。
それがいいのか、現代風なのか、無観客のせいなのかはわからない。でも、これにはライガーは「ただの乱闘だ」と厳しい目を向けていた。
だが、岩谷が後楽園ホールの南側の一番上の階段から鹿島に蹴倒されて、35段下のライガーの足元まで転げ落ちて来た時にはあ然としていた。
「『蒲田行進曲』のあの命がけの階段落ちのシーンを後楽園ホールで見るとは思ってもみなかった」とライガーは言った。
このあたりから、ライガーの岩谷への感情移入が始まった。ライガーは解説者と言うより岩谷の応援団になっていたのだ。
ライガーは岩谷の繰り出す技を褒め称えた。
岩谷のキックは強烈だ。背中にぶち込んだ一発に「ドスンですよ。ベチャじゃない」とライガーが反応した。
岩谷がコーナーの鹿島にドロップキックを決めて、笑いを浮かべた。鹿島をいたぶる前のその不気味な笑みを「恐ろしい。怖いですよ」と嬉しそうに評していた。
ライガーは岩谷のドラゴンスープレックスに想像以上の速さを感じていたようだった。さらに、コーナーからのドロップキックには「高い!」と思わず叫んでいた。
岩谷がパイルドライバーからこの日、二度目のムーンサルトプレスを決めて勝利すると「強い!」と岩谷の圧勝を認めた。