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ダルビッシュは「予防措置」も速い。
MLBの延期決定よりも先行した理由。
text by
ナガオ勝司Katsushi Nagao
photograph byAFLO
posted2020/03/14 09:00
ダルビッシュの思考法は危機対応でもやはり原則を大事にするものだった。
「6フィート空ける」という指示も。
今回のMLBの「予防措置」は、NBAや北米プロアイスホッケー(NHL)、同プロサッカー(MLS)などの主要スポーツと歩調を合わせた形になったが、彼らの指針となっているのはCDC(米国疾病対策センター)である。たとえば我々が取材するにあたっても、「感染を防ぐために他人との距離を6フィート(182.88センチ)は空けること」という曖昧な「指導」も出されている。
今のところは選手やコーチだけではなく、メディアや関係者の中でも感染者が出たというニュースは聞かないが、Precautious=予防措置という「先手」を打つのは賢明な判断だろう。
ダルビッシュが楽観しない理由。
たとえばカブスのダルビッシュ有投手は、メジャーリーグの決定よりずっと前から、個人的に「予防措置」を取り続けてきた。
自身のYoutubeチャンネルで明らかにしたように、オフの間に日本からの訪問客を断っているし、3月5日、オープン戦2試合目の登板を回避したのも、その1つだった。
「昨日(4日)から咳と鼻水があったので、この状況ですから(コロナウイルスの初期症状である)熱が出てないのは分かっていたんですけど、一応、どういうことがあるか分からないし、チームに連絡してドクターと話をしてもらった」
5日の登板を回避して翌日の練習試合に登板し、3イニングをきっちり投げたダルビッシュはそう言った。彼は「自分」ではなく「チームメイト」、感染が拡大すれば責任を問われる「球団」や「チームドクター」への配慮をした。
その後のメジャーリーグの決定を考えれば、彼は「組織の決定」よりも、一歩も二歩も先に行っていたことになる。
「よくインフルエンザと比べたりとか、普通の風邪と比べたりとか言うけど、僕は現時点で分からないことが多すぎる。今になって2つの型があると言い出したりとか、1つのほうが致死率が高いとか、そういうのがどんどん出てくる。未知数であるからこそ、楽観できないと僕は思ってます。何もないに越したことはないけど、何か本当に大変なことになった時に取り返しつかないことになるようなことは、自分はしたくない」