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F1ホンダ、29年ぶりのタイトルへ。
王者メルセデスに宣戦布告?
text by
尾張正博Masahiro Owari
photograph byGetty Images
posted2020/03/12 07:00
密なコミュニケーションを図って準備を進めてきたレッドブル・ホンダ。フェルスタッペンも「毎回表彰台に上りたい」と闘志を燃やす。
予定よりも2週間も早く。
ホンダは可能な範囲でその要求に応え、完成したレッドブルの新車「RB16」は昨年にも増して、大きくシェイプアップしたマシンに生まれ変わっていた。こうしたホンダ側の協力は、レッドブルのマシン開発の方向性だけでなく、スケジュール面でも大きな影響を与えていた。
ホンダF1のマネージングディレクターを務める山本雅史は、テストに行く前、レッドブルのヘルムート・マルコ(モータースポーツアドバイザー)から、こんなメールを受け取ったという。
「『ホンダのおかげで、今年は予定よりも2週間も早く進んでいる』と書かれていました」
昨年のスケジュールの遅れは、レッドブルだけでなく、ホンダのパワーユニットにもあった。山本は、1年前を次のように述懐する。
両者の距離を縮めた苦い経験。
「昨年われわれは、本来であれば、第4戦アゼルバイジャンGPで投入したスペック2のパワーユニットを開幕戦から投入したかった。しかし、耐久テストの結果、ある部品に問題があることが判明。信頼性を確保した部品を開幕戦までに間に合わせることができなかったため、別のスペックを入れるしかなかった。だから、正直、開幕前は表彰台に立てるとは思っていなかった」
さらに、蓋を開けてみると、レッドブルの車体側にも競争力が欠けていることが判明。序盤戦を終えた段階で、山本はホーナーから「フロントウイングの性能が自分たちが期待していたほど機能していない」と言われ、驚きを隠せなかったという。
しかし、この苦い経験が、両者の距離を縮める結果となった。'20年に向けたマシン開発を行う上で、レッドブル側から受けた相談の中には、ホンダにとって難しいものもあったが、浅木は「でもできないものは、できないと言いました」と、レッドブルのリクエストを拒んだこともあったという。