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謎の新システムに、“そっくりさん”。
F1開幕前テストの意外な話題たち。
posted2020/03/08 19:00
text by
尾張正博Masahiro Owari
photograph by
Getty Images
2020年の開幕に向けて、スペイン・バルセロナ近郊のカタロニア・サーキットで行われたF1プレシーズンテスト。例年ならそのシーズンを戦う新車の速さに熱い視線が送られるが、今年はいつもと少し違うことに注目が集まった。
ひとつは、メルセデスのマシンに搭載されていた車載カメラの映像の中にあった。
コーナーを立ち上がってメインストレートに入ったところで、ドライバーのルイス・ハミルトンがステアリングを引くと、やや外側に開いていたフロントタイヤが少しだけ内を向き、ストレートエンドでステアリングを押すと今度はフロントタイヤが再び外側に開いたのだ。
その日記者会見を行ったメルセデスのテクニカルディレクター、ジェームス・アリソンはこのシステムが「DAS」(デュアル軸ステアリング)というものだと明かし、こう続けた。
「われわれのマシンには、斬新なアイディアが搭載されている。ただ、それをどのようにして使用するのか、またどんなメリットがあるのかは秘密だ」
トー角を変えられる新システム。
マシンを上から見たとき、進行方向に対してタイヤが持つ角度をトー角という。現在のF1マシンのフロントタイヤは、進行方向に向かってタイヤがやや外側に開いているトー・アウトが基本だ。その理由は、ステアリングを切ったときに最初の反応が鋭くなるからだ。ただ、その角度をつければつけるほどストレートでは空気抵抗が増える。
そこでメルセデスはストレートとコーナーリングでこのトー角を変えられるシステムを考案。相反する2つの問題を解決しようとしたわけだ。
ライバルチームの関係者の中には「これはレギュレーション違反ではないか」と指摘する者もいたが、レギュレーションを司るFIA(国際自動車連盟)は、「合法であることは確認しており、安全性という観点からも問題はない」とコメントしている。