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川崎・田中碧の心に野村克也の1冊。
「楽しくない」時期を乗り越えて。
text by
林遼平Ryohei Hayashi
photograph byGetty Images
posted2020/02/22 08:30
今季、川崎で新たな役割を与えられた田中碧。昨季味わった悔しさをJの舞台で晴らす。
新しい役割を与えられて。
プロ3年目に感じたもやもやを抱えたまま臨んだキャンプ。ただ、そこには新しい役割が用意されていた。
今季、チームは新システムに着手。田中は以前のボランチではなく、アンカーやインサイドハーフのポジションに配置された。今までとは異なるポジション、今までとは異なる役割。そこでどうやれば上手くいくのか。どうすればチームの勝利に貢献できるのか。
サッカーのことばかり考え始めていたら、自然と余計なことは考えなくなった。
大好きなサッカーにただ、ひたすら向き合う。純粋だからこそ壁にぶつかることもあれば、純粋だからこそ徹底して勝負にこだわることができる。サッカー小僧に戻っていたのだった。
鬼木監督も認める田中の努力。
1年目から成長を見守る鬼木監督は、田中についてこんなことを言っていた。
「努力し続けているのが大きい。決していろいろなものを持っている選手ではなかったかもしれないが、努力をし続けるとこういう風になるんだと示してくれている。彼の意欲が、この成長につながっているのは間違いない」
昨年は周りから見れば駆け足だったかもしれない。ただ、本人からしたら一歩一歩進んできたに過ぎない。新たな役割を得て迎える新シーズンも、純粋にサッカーを楽しむことで1日1日、前に進んでいくだけだ。
「去年の1年も、今年の1年も、僕の中でやることは変わらない。毎日成長することが自分にとって大きな成長につながると思っている。決して難しく考えすぎず、1日1日サッカーを楽しんでやれればいいと思います」
2020年。田中にとってどんな年になるのか。日進月歩で進化した先に新たな景色が待っている。