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川崎・田中碧の心に野村克也の1冊。
「楽しくない」時期を乗り越えて。 

text by

林遼平

林遼平Ryohei Hayashi

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photograph byGetty Images

posted2020/02/22 08:30

川崎・田中碧の心に野村克也の1冊。「楽しくない」時期を乗り越えて。<Number Web> photograph by Getty Images

今季、川崎で新たな役割を与えられた田中碧。昨季味わった悔しさをJの舞台で晴らす。

振り返れば、プロ1年も同じだった。

「いろいろ試合に出ることで感じるものもあったし、どうすればいいのかと難しく考えてしまうところがあった。自分がどうやったらチームにとって力になれるのか、いろいろ考えていたと思う」

 いま自分は何をすればいいのか。考えれば考えるだけサッカーの楽しさが薄れていた。

 振り返れば、プロ1年目の時も“サッカーが楽しくなくなっていた”時期がある。怪我で出遅れたとはいえ、試合に出るどころかトレーニングの紅白戦にすら出れない日々が続いたからだ。

「やめたくなったし、つらかった。今までの人生であれほど試合に出られないことはなかったので……」

 この時ほど、塞ぎ込んだ時はなかったのではないか。それほど悔しい思いを抱えていたと言う。ただ、そんな時に支えとなったものがある。

野村克也の本に書いてあった言葉。

 先日、84歳でこの世を去った故・野村克也氏の本である。もともと野球好きではなかったし、本屋でたまたまそそられただけ。それでも偶然手に取った本が田中を勇気付けることになる。
 
「その本に書いてあった『1年目に種をまき、2年目に水をやり、3年目に花を咲かせましょう』という言葉が自分の中にすごく残っている。プロに入る前、自分には力がなかったのですぐに出られるとは思っていなかった。もちろんそれ相応の覚悟でプロの世界に入ったけど、自分の中では最初の3年間が勝負だと思っていたんです。そういう思いに加えて、この言葉を知ることができて、自分の中ではすごく支えになっていたと思います」

 現に、田中はプロ3年目で花開いた。1年目の悔しさがあったからこそ今があるし、2年目の頑張りが3年目につながった。まさに野村克也氏の言葉通りにプロ人生を歩むことができているのだ。

 だからこそ、4年目を前にしてぶつかった壁をどう打ち破るのかが気になった。

【次ページ】 新しい役割を与えられて。

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