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本田宗一郎の名言を胸に。
F1に挑む日本人メカニック秘話。
text by
尾張正博Masahiro Owari
photograph byMasahiro Owari
posted2020/02/02 20:30
左から新木、白幡、吉田。1、2、3の指の本数は所属するカテゴリーのF1、F2、F3の意味。
現在の新木はF3のメカニック。
日本で数年レースチームのメカニックとして経験を積んだ後、'16年末に渡英。語学学校へ通いながら履歴書を送り続けるも、なかなか良い返事をもらえなかったときに、手を差し伸べたのが先にイギリスに来ていた吉田だった。
'16年にオランダのチームで働いていた吉田は、'15年にイギリスで仕事をしていたときのチームメートであるジンバブエ人の友人を紹介。吉田の仕事ぶりから日本人の熱心さを評価していたその友人が、新木の採用をチームに進言してくれた。'17年からイギリスのチームに雇われた新木は、現在F3のメカニックとして活躍している。
「いつF1から誘われてもいいよう、準備はできています。もちろん完璧ではないところもまだありますが、声がかかれば行きます。もう、F1は手が届かない夢の世界ではないと思っていますから」(新木)
チャレンジして失敗を恐れるよりも。
自分の背中を見て後を追ってきた2人の日本人メカニックの活躍に、白幡も目を細める。
「彼らがF1にステップアップして、一緒に仕事ができたらいいですね。もしそれが別のF1チームだったら、そのときはライバルとして腕を競い合いたい。その日が来るまで、まだF1の世界で頑張りますよ」という白幡は、日本でF1のメカニックを目指そうとしている若者たちにこうメッセージを贈る。
「チャンスを待つのではなく、とにかくチャレンジしてほしい。例えば、日本人はすぐに英語ができるかどうかを気にしますが、私だっていまだに英語は完璧じゃない。きちんとしゃべれるようになるのを待っていたら、人生終わってしまいます」
本田宗一郎の名言には、こんなものもある。
「チャレンジして失敗を恐れるよりも、何もしないことを恐れろ」