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本田宗一郎の名言を胸に。
F1に挑む日本人メカニック秘話。
text by
尾張正博Masahiro Owari
photograph byMasahiro Owari
posted2020/02/02 20:30
左から新木、白幡、吉田。1、2、3の指の本数は所属するカテゴリーのF1、F2、F3の意味。
白幡の背中を追いかけた男。
「自分の背中を見て、後に続いてくれる若者が出てきてほしい」という気持ちから、F1を目指した白幡。その挑戦が、後進たちの道を拓いた。
そのひとりが、白幡のF1での仕事ぶりを取り上げた自動車専門誌の記事を見た吉田直実だ。当時吉田が所属していた日本のレースチームのスタッフの中に白幡の教え子が何人かいたこともあり、'14年の夏に日本に帰ってきた白幡と出会う機会に恵まれる。
直接白幡と話して刺激を受けた吉田は、'15年に渡英。イギリスやオランダのF3チームのメカニックを経て、'17年からGP3チームのメカニックとなり、'19年からF1への登竜門であるF2チームのチーフメカニックとして活躍している。
吉田の夢は、もちろんF1のメカニックだ。それは昨年、元チームメートだったアントワーヌ・ユベールを事故で亡くすという辛い経験によって、さらに強くなった。
「オランダのF3チーム時代に一緒にレースしていました。チームメートをレース中の事故で亡くしたのは、僕にとって初めての経験だったのでショックでした。とてもいい人間で、彼がF1を走らせるのを見たかった……いま自分にできることは、強い気持ちを持って、前へ進み続けること」(吉田)
F1のガレージに魅せられたもう1人。
白幡の背中を見てF1を目指しているメカニックが、もうひとりいる。新木崇弘だ。白幡がかつて教鞭を執っていた専門学校に通っていた新木の担当の先生が、白幡の友人だった。先生に連れられて行った日本GPで白幡を紹介され、F1チームのガレージを見学する機会を得た。
「F1マシンがカッコ良かったのはもちろんですが、ガレージの内装や道具もまたきれいだったことにとても驚いたのを覚えています。やっぱり世界最高峰の舞台は違うな、と。メカニックとして勝負するなら、この舞台しかない」(新木)