JリーグPRESSBACK NUMBER

高原直泰・独占インタビュー(後編)
「日本サッカーの底辺から見えるもの」
 

text by

涌井健策(Number編集部)

涌井健策(Number編集部)Kensaku Wakui

PROFILE

photograph byNanae Suzuki

posted2020/02/10 07:05

高原直泰・独占インタビュー(後編)「日本サッカーの底辺から見えるもの」<Number Web> photograph by Nanae Suzuki

黄金世代の中心メンバーである高原直泰も40歳になった。しかし、だからこそできることがあると本人は確信している。

社会人リーグの底辺から飛び級。

 沖縄SVは現在、九州リーグに所属している。

 2016年に社会人では最下級となる沖縄県社会人3部サッカーリーグに加盟。そこで全勝優勝を果たすと、県のサッカー協会の推薦もあり「飛び級」で県1部への昇格が決まった。翌2017年に県1部から昇格を果たして九州サッカーリーグへ。九州の舞台では1年目は2位に終わったものの、2年目の昨季は圧倒的な強さで優勝した。

 JFLに昇格するためには、各地域リーグの優勝チームなどが集う地域CLで2位以内に入ることが求められる。昨季、沖縄SVは地域CLの予選リーグで敗退している。昇格の切符を掴んだのは、福島のいわきFC、高知ユナイテッドSCの2チームだ。

「この地域CL、J1や日本代表の試合とはまったく違う難しさがあります。もちろん3日連続試合というシビアな日程もそうですけど、ひとつも落とせないというプレッシャーもありますし、想定外の選手の怪我もあったり、そもそもサッカーの質そのものが違いますからね」

 高原は、社会人リーグの底辺から這い上がってきたことで「日本サッカーの変化」を感じているという。

「自分はJFLを経験すれば、日本サッカーのすべてのカテゴリーでプレーすることになるんですけど、地域リーグとJFLのクラブはとても面白いんですよ。

 岡田(武史)さんの今治もそうですけど、このカテゴリーには本当の意味で地域に根ざしているクラブが多くて、Jリーグの理念を最も直接的に体現しているんじゃないかな。だから、カテゴリーだとJ3の下なんですけど、それにとらわれずにクラブのことを知ってほしいなと思います」

J3のクラブより環境は上?

 さらに地域リーグに所属するクラブの環境面も、近年急速に充実してきていると指摘する。

「ちゃんとした運営がされているクラブはトレーニング環境を比較しても、Jのクラブに負けないんじゃないかな、と。J3のクラブと比較すれば、沖縄SVはむしろ勝ってるんじゃないかと思うくらい。自分たちはシーズン中、基本的には天然芝で練習できていますから。

 沖縄という暖かい土地で恵まれているからなのですが、他の地域にもハード面をしっかり整備しているクラブがいくつも出てきた。これこそが日本サッカーの“底上げ”なんじゃないかって」

 理念とハード面の整備がすすむことで、この層のクラブのサッカーのレベルがどんどん上がっているという。

「Jでやっていた選手もどんどん移籍していますよ。ガンバにいた新井場(徹)がオーナーのティアモ枚方には元代表の二川(孝広)や野沢拓也もいますし、ボンズ市原には川崎でやっていたレナチーニョがいた。栃木シティやおこしやす京都にも元Jリーガーが加わっていて、急激にサッカーのレベルが上がった。だから、それぞれの地域の優勝チームが集まってガチバトルする地域CLは、今、すごい面白いことになってるんですよ。あの大会では、技術だけじゃなく、メンタルまで試されますから見ていても面白いと思いますね」

【次ページ】 再就職先であり、最初の所属クラブにもなる。

BACK 1 2 3 4 NEXT
#高原直泰

Jリーグの前後の記事

ページトップ