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高原直泰・独占インタビュー(後編)
「日本サッカーの底辺から見えるもの」
 

text by

涌井健策(Number編集部)

涌井健策(Number編集部)Kensaku Wakui

PROFILE

photograph byNanae Suzuki

posted2020/02/10 07:05

高原直泰・独占インタビュー(後編)「日本サッカーの底辺から見えるもの」<Number Web> photograph by Nanae Suzuki

黄金世代の中心メンバーである高原直泰も40歳になった。しかし、だからこそできることがあると本人は確信している。

「試合では、違い、見せちゃいますよね(笑)」

 現在、約30人所属する選手のうち10名がプロ契約、20名はアマチュアだ。アマチュアのうち沖縄出身の選手は3名。だからこそ高原はクラブの収益となるスポンサー集めの営業活動はもちろん、アマチュアの選手たちの働き口まで自身で探してきたという。それもこれも「自分が責任を持っている」クラブを支えるためだ。

 ただ、現在に至るまで、高原の生活は「選手としてのリズム」がベースにある。

「基本的には、今、午前練習があって、午後から営業とかそれ以外のクラブの仕事をしたり、クラブのジュニアユースの育成のほうに顔を出したりしますけど、沖縄に来る前と同じだけの練習はしています。

 沖縄に来る前も時間はあったんですよ。サッカーの練習って午前か午後だけということが多い。あとの空いている時間で何をするか。若いときは自分のプレーのことだけを考えていたので、コンディショニングや補強、リラックスのために使っていましたけど、いまはその時間を経営の仕事にあてているだけなんです」

 高原は昨季、7得点をあげている。今もチームでナンバーワンのストライカーですか? そう質問をすると、いたずらっ子のような無邪気な笑顔を浮かべた。

「やっぱ試合では、違い、見せちゃいますよね(笑)。去年、初めてクラブとして九州リーグで優勝して、全国地域チャンピオンズリーグ(以下、地域CL)まで勝ち進んだんです。そこで3日連続で90分の試合をこなせたことは自信になりました。2トップの一角で、270分、全部出ましたからね、俺」

 もちろん、それだけの体力とかコンディションを維持するためには普段の練習から追い込まないといけない。

「生活の中で削らなければならないものもあります。削ったのは、『自分がただ楽しむための時間』かもしれない。でも、自分自身はクラブの仕事をするのを楽しんでいるのでまったく問題ないんですよ。

 今まで出会えなかった人と会うことができるし、話をするなかで自分の考え方や視野が広がってきているのを感じていて、それがすごく楽しい。そんな状態だから、沖縄にいるのに、もう2年以上も海に入ってないんですからね(苦笑)」

周囲が納得しないと試合には出られない。

 ただ、高原も40歳になる。「黄金世代」と呼ばれる同級生たちも、小野伸二(FC琉球)や稲本潤一(SC相模原)はまだ現役を続けているものの、多くは現役を退いている。高原自身も昨年は怪我も経験した。

「天皇杯でサンフレッチェ広島と対戦できたんですけど、その試合でちょっと脚の怪我をしてしまって。大怪我ってほどではないんですけど、手術をしなければならず、九州リーグの18試合のうち半分は出られなかったんです。いまはもう問題ないんですけど、今季はシーズンを通して、フルに戦うことが目標です」

 ただ、選手としての「引き際」は自分自身で冷静に見極めるつもりだ。

「クラブの代表であり、責任を持つ立場だからこそ、(現役を)引くタイミングを見誤ってはいけないなと思っています。トレーニングも十分こなせないのに、変に調整だけうまくやって試合だけ出るみたいなことはしたくない。それでは選手も納得しないですから。だからこそ、若い子たちと同じだけ走って、練習して、その上で違いをみせた上で、試合に出ているつもりです。これがいつまでできるか、楽しみですけどね」

【次ページ】 社会人リーグの底辺から飛び級。

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