「基本姿勢は、和して同ぜず、です」

　現役を引退した選手が恩師のもとを訪ね、指導者として弟子入りする。これは古来より王道で、枚挙にいとまがない。今回のケースは逆で、恩師をコーチに招聘した。このような事例を私は寡聞にして知らない。

「いつか、吉武先生とふたりで思い描くサッカーを実現させたい。この35年間、ずっと思い続けてきたことでした」と永井監督。「いくら気心が知れた相手でも、一緒に仕事をするというのはたやすいことではない。意見が合わないことは山ほど出てきます。仲よくするだけではいい仕事ができません。基本姿勢は、和して同ぜず、です」と吉武ヘッドコーチ。

　ピッチの練習風景は、永井監督と吉武ヘッドコーチから交互に指示や注意が出されるが、指揮系統に乱れは見られない。吉武流を追求してきた師弟間で、ひとつの頭脳に集約されている。

　今季の東京Vは大久保嘉人、高橋祥平といった実績充分のビッグネームを補強。さらに中枢部も強化され、面白そうな気配が漂ってきた。