バスケットボールPRESSBACK NUMBER
絶対的支柱・篠山竜青を欠く川崎。
Bリーグ制覇へPG青木の役割と責任。
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph bySyo Tamura/AFLO SPORT
posted2020/01/24 08:00
天皇杯決勝にも出場した川崎のPG青木保憲。怪我の篠山に代わってチームの司令塔が務まるか。
スッポンが吸い付くように密着マーク。
第3Qのこと。相手ゴール下のエンドラインから千葉ボールとなったタイミングで、青木が強烈な勢いで富樫に張り付いていった。一度、審判がプレーを止めたのだが、青木は笛がなったのに気づかず、富樫の自由を奪おうと身体を密着させたまま。
富樫は露骨に嫌がる表情をうかべ、青木の胸を軽く押して、距離をとった。そして、笛がなり、試合が再開した。
しかし、直前のやり取りなど少しも気にしないかのように、青木はまたもスッポンが吸い付くように密着マークを見せていった。守備の基本は、相手の嫌がるプレーをすることだ。相手ににらまれても、青木にはそれを続けられるだけの度胸がある。
大人になってから身長を伸ばすことが出来ないように、度胸もまた、プロになってから身につけようとしても手にできないものである。
絆と競争のなかに存在するもの。
青木が筑波大時代に師事したのは、1996年から2002年まで現在の川崎(2001年途中まで東芝レッドサンダースという名称だった)のHCを務めた吉田健司である。その意味で、青木はチーム創設70周年を迎えた川崎のDNAを引き継ぐ男なのだ。
今シーズンが終わった後に、篠山がいなかったから、チームとしての最適なバランスや連携を築き上げられなかったと反省することになるのか。
それとも、チームも残された選手も成長できたと手応えを口にすることになるのか。
その行方は、これからの彼の行動にかかっている。
思えば、篠山が怪我をした夜、先輩の一日も早い復帰を願い、リスペクトを語ったうえで、彼は覚悟を決めていた。
「言い方が悪いかもしれないですけど、僕にとってはこれが1つのチャンスだと思わないといけないです……。ここで僕がステップアップできれば、竜青さんが帰ってきたときに、チームは必ずレベルアップするはず」
プロのチームとは、絆と競争のなかに存在するもの。その真理を知っているのが、青木という選手である。