リーガ・エスパニョーラ最前線BACK NUMBER
夢を叶えた新監督セティエン。
バルサを“本来の姿”に戻せるか?
text by
横井伸幸Nobuyuki Yokoi
photograph byGetty Images
posted2020/01/24 11:40
グラナダ戦はメッシの決勝点で1-0だったとはいえ、セティエン新監督のポゼッション重視と下部組織出身者の積極起用方針が見て取れた。
ポチェッティーノにも断られて。
唯一の後援者であった会長までもがバルベルデを見限ったことがばれてしまった以上、監督交代は速やかに行わなければならない。
結局シャビに拒まれたバルトメウは、ならばとオランダ代表監督クーマンに当たったが、「6月のユーロが終わるまでは無理」と袖にされた。そこで尻に火がつき、以前「バルサの監督は絶対にやらない」と明言したことがある前トッテナム監督ポチェッティーノにも電話をかけたが、当然断られた。
役員たちの間では他にも前ユベントス監督アッレグリ、現モントリオール・インパクト監督アンリの名が挙げられていたというから、首脳陣の慌てぶり――明確な方針の欠如がよくわかる。
最終的に監督候補はバルサBのフランシスコ・ガルシア・ピミエンタと、前ベティスのキケ・セティエンの2人に絞られた。
バルトメウは後者を選んだ。
返事は5分もかからなかった。
すぐに監督となることを請われたシャビが最終的な返答をする数時間前――スペインの1月12日昼、自宅から車で15分ほどのスタジアムで国王杯2回戦エスコベド対セビージャを観戦していたQ・セティエンは2本の電話を受けた。
最初の相手は、バルサとのコンタクトの有無を知りたがっていたジャーナリスト。次はバルサに情報提供を求められていた代理人だ。
Q・セティエンは「まさか」と思いながらも、ラスパルマス時代から頼みにしているアシスタントコーチのエデル・サラビアにメールで報告したという。
その夜、また電話が鳴った。今度はバルサから。監督を引き受ける気はあるか、という確認だった。
2017年9月30日の当コラムでも紹介したとおり、クライフのサッカーから多くを学んだQ・セティエンにとって「バルサの監督」は夢である。
「返事をするまで5分もかからなかった。バルサから目をつけられるなんて、思いもよらなかった。私の履歴書を見ればわかるだろう。実績といえば、ベティスやラスパルマスやルーゴ(当時は2部B)に非常に良いサッカーをさせたことだけだ」
これは、就任会見での言葉である。