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秋山翔吾は努力を実らせる天才。
「メジャーに行っても変わらない」 

text by

市川忍

市川忍Shinobu Ichikawa

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photograph byAP/AFLO

posted2020/01/23 11:30

秋山翔吾は努力を実らせる天才。「メジャーに行っても変わらない」<Number Web> photograph by AP/AFLO

努力を積み重ねてメジャー移籍を実現させた秋山。レッズの施設を見て、西武入団時の思い出がよみがえってきたという。

「2倍、3倍の時間がかかるんです」

 秋山といえばプロ野球選手の中でもストイックで、練習熱心なことで知られているが、何度も受けてもらったインタビュー機会の中で、とりわけ印象に残る話がある。

 最多安打記録を達成したころだったと記憶している。練習量の多さについて話が及んだ際、秋山はこう説明した。

「僕は器用ではないので、ひとつの練習方法を試してみたときに、途中で『これは自分には合わないかもしれない』とわかるまでに時間がかかるし、そこから違う方法を試して答えにたどり着くまでに、また時間がかかる。他の人だったら短時間で済むことに、2倍、3倍の時間がかかるんです。だから結果的に練習する時間が長くなるんですよ」

「それがストイックに映るんでしょうね」と謙遜したが、秋山の練習量の多さはチーム内でも周知の事実だった。

 器用か、不器用かと聞かれると、おそらく不器用な性格の部類だろう。天才か、努力型かと極端に分ければ、秋山は努力型の選手に入るのかもしれない。しかし、「時間がかかる」という自身の性格を冷静に分析し、その練習量を消化できるだけの体力をつける努力も同時に進めてきた。

 努力を実らせる天才とも言えるだろう。

どんな記事も抜かりなく確認する。

 そして、秋山は自身のことを書かれた記事をよく読んでいる選手だった。

 新聞から雑誌、ウェブメディアに至るまで目を通しているようで、掲載されると、すぐに声をかけられた。自分以外の選手の記事にも目を通すようで、あるとき、「鈴木将平のポジション、内野手になってましたよ!」と誤植を発見され、慌てて鈴木に謝罪に行ったこともある。さまざまなことに関心を持っている証拠なのだろうと驚いた。

 2018年、リーグ優勝を果たした際の記事には、秋山が入団した年の、ソフトバンクの優勝が決まった日のことを記事にした。胴上げをするソフトバンクを横目に、室内練習場に直行し、練習をしていたエピソードである。数日後、球場で会った際に「よくあんな昔のことを掘り出してきましたね」と笑われた。

【次ページ】 記者として背筋が伸びる選手だった。

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