福西崇史の「考えるサッカー」BACK NUMBER
東京五輪世代、誰が爪痕を残した?
福西崇史「あえて挙げるなら……」
text by
福西崇史Takashi Fukunishi
photograph byJFA/AFLO
posted2020/01/16 20:00
ボランチの位置から前線に飛び出すなど、停滞した攻撃の中でも存在感を見せた田中碧。カタール戦は不運も重なり、退場処分となった。
本番までにどれだけ成長できるか。
<攻撃陣の停滞に守備でのミスによる失点と、拙い試合続きだったU-23日本代表。東京五輪メンバー入りへのサバイバルだったことを思うと、3試合で終わったのは非常に物足りなく映る中で、力を発揮できた選手はいたか。福西氏は「あえて」という条件付きで挙げたのは……。>
今大会でアピールできた選手……これは「あえて挙げれば」という言い方になりますが、田中碧でしょうか。冒頭で話したカタール戦のレッドカードは不運でしたが、サウジアラビア戦も含めて、状況に応じたプレー判断が比較的できていました。パスを配球するだけでなく、前線に飛び出すことも何回かあった。攻撃が膠着する時間帯が多かった中で、田中碧がボールを持つとゲームが動く印象を受けました。
昨年10月のブラジル遠征では2ゴールを挙げて、昨シーズンのJリーグではフロンターレの主力となりました(ベストヤングプレーヤーを受賞)。ただフロンターレでは経験豊富な選手が多い中でプレーできている一方で、五輪代表では自ら引っ張る立場になってほしいとも感じます。そこは本人も意識しているはずでしょう。
田中碧の名前を挙げましたが、誰もがこの結果を、危機感を持って受け止めないといけない。3月の五輪代表戦で堂安(律)に久保(建英)、冨安(健洋)に中山(雄太)、板倉(滉)といったメンバーが招集されれば、外れる選手はいるわけです。
だからこそ東京オリンピックまでの約半年という短い期間でどれだけ成長できるか。そういった意味では、本当に五輪メンバーに生き残ろうと思う選手がいるのか。この数カ月がサッカー人生において大きな勝負になります。
新シーズンで圧倒的な力を見せてやる――というくらいの気概を見せられるか。そういった意味で、来月のJリーグ開幕を楽しみにしています。
(構成/茂野聡士)