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司令塔のキャプテン篠山竜青が負傷。
天皇杯制覇へ川崎が問われる真価。
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byB.LEAGUE
posted2020/01/08 19:00
6季連続で主将を務める篠山はまさにチームの支柱。12月31日、左肘関節脱臼で全治3カ月程度であることが発表された。
昨年末、立て続けにアクシデントが。
その成果は、Bリーグ史上最高勝率を記録した昨シーズンの千葉ジェッツ(天皇杯3連覇中だが、今大会はファイナルラウンドの出場権を逃した)を上回るペースで積み上げてきた勝ち星となって表れている。
ところが、順風満帆な日々を過ごしていた彼らを、昨年末、立て続けにアクシデントが襲った。
まず、12月22日にマティアス・カルファニが右ひざを痛めた。先に挙げたヒースと並んで、チームの首位独走の原動力となっていたが、今季中の復帰も危ぶまれるほどの怪我だった。
そして、その1週間後。
滋賀レイクスターズ戦の第3クォーター開始から4分28秒がたったときだった。ポイントガード(PG)の篠山は、鋭いドライブからレイアップを強引に決めた。試合をひっくり返す、逆転のゴールだった。
ただ、着地の際に左手のひじから地面についてしまった。左ひじが通常とは異なる角度に曲がった。近くにいた人ならば、一目で大きな怪我だとわかるものだった。
下された診断は全治3カ月。重傷だった。
全速力でロッカールームへと走った理由。
怪我をした直後のことを思い出してみる。周りの者が駆け寄るよりも早く、篠山は患部をかくすように、全速力でロッカールームへと走り去っていった。
なぜ、篠山は痛がる素振りを見せることなく、バックヤードへと消えていったのか。
苦悶の表情をファンに見せたくなかったのか、自らの治療のために長い時間にわたって試合が中断するのを避けたかったのか。
その真相は復帰してから語られるだろうが、1つ言えるのは、ホームゲームにおける逆転ゴールの価値を、彼が理解していたという事実だ。
実際、この前日に、チームとファンが一体になって作り出す、相手チームを萎縮させるような空気について、彼はこう語っていた。
「特に今シーズンにかんしては、HCがかわって、バスケットスタイルもかなり変化して、見てくれる人たちに何かを与えられるようなゲームを見せるんだと考えてやっています。
(藤井)祐眞やJ(ヒース)のハッスルとか、マティ(カルファニ)のプレーなど、ベンチで僕が見ていても、震えるものはあるし。そういう意味で、お客さんたちを引っ張っていっているのかなと思います」
あれほどの怪我をしながらも、その場を素早く離れたのは、逆転ゴールに沸いたファンの作り出した空気を壊さぬように、というプロフェッショナルゆえの行動だったのではないか。