野球クロスロードBACK NUMBER
最下位予想を覆した2019年の楽天。
現れた救世主、石井一久GMの慧眼。
text by
田口元義Genki Taguchi
photograph byKyodo News
posted2020/01/04 11:40
前半戦を欠場した則本昂大も、復帰後はさすがの投球を見せた。来シーズンはフル稼働を心に誓っていることだろう。
次々と現れた救世主たち。
不測の事態からの相乗効果。続々と現れるクリムゾンレッドの救世主たち。
石橋良太が中継ぎ、先発と、投手陣のダイナモを果たす。
「結果どうこうってより、生き残るだけです!」
苗字の如き堅実さは皆無。選手、指導者として楽天を知り尽くす平石洋介監督の、「ビビったら使わんぞ!」の喝に奮起する。シュート、シュート、カットボール。強気に変化球を投げ込み、プロ初勝利を含むチーム2位タイの8勝。生き残った。
投手でもうひとり。
開幕当初は外国人投手の3番手。一軍登録枠の関係で、来日早々、泉の住人(二軍)に甘んじていたアラン・ブセニッツが鬱憤を晴らす。5月の一軍昇格以降、獅子奮迅。8月は14試合で11ホールド、防御率0.00で月間MVP。
「今の気持ち? 複雑だよ。名誉なことだけど、しっかり守ってくれている野手にこの賞をあげるべきだと思うね」
どこまでも謙虚なアメリカ人は、54試合で28ホールド、防御率1.94をマーク。生き残った。
岸、則本の長期不在のなか粘った投手陣。チーム防御率はリーグ2位の3.74。頑張った。
この男はフランコかウィル・スミスか。
ところで、救世主は投手にしかいなかったのか? 否。野手にもいたに決まっている。
第1の男。その名はジャバリ・ブラッシュ。
打撃フォームは、'90年代の野球少年たちのネタとなった、元ロッテのフリオ・フランコに超似ている。動画を見せると「ワオ! こんな珍しいフォームで打っている選手が、私以外にいたなんて驚きだね」。
笑顔になると、『アイ・アム・レジェンド』とかヒーローもので数多く主演を張るウィル・スミスに超似ている。パワプロやプロスピで言う、確定ホームラン級の花火を何発も打ち上げる。
――あなたはヒーローだ。ウィル・スミスのようにね。彼が返答する。
「似ているとは言われるけど、私はヒーローではないよ。ただチームのためにプレーしているだけさ」
どこまでも控えめなアメリカ人は、楽天外国人歴代最多の33本塁打を記録。来日1年目でいきなりレジェンドに名を連ねた。